ツールに頼らない学び方:大人の学びの新ルール

翻訳:POLYGLOTS magazine編集部
「待って…先週のアイデアをどこに書いたんだっけ?」
これが2025年の「学び」の姿です。ノートに、Googleドキュメントに、そしてNotion*やRoam*のようなアプリに、メモは散らばっています。ファイル名が「final_final_revised2」(最終版最終決定修正版2)になっていることさえあります。心当たりはありませんか?
いま、学びは卒業と同時に終わるものではありません。多くの人にとって、それは始まりにすぎません。しかし仕事も、テクノロジーも、そして私たちの集中力も変化する中で、学び方もまた変わらなければなりません。より速く、より効率的にというだけではなく―もっと意図的に、もっと意識的に、そしてできれば一度に開くタブを少なくして。
ツールだらけで、集中はどこへ?
「生産性アプリ」は、生活を楽にすると約束してくれました。しかしあまりに多くのツールがあり、人によっては今、かえって生産性が低くなったと感じています。実際、『Work & Stress』誌の研究では、わずか4秒の中断でさえミスが3倍になり、集中を取り戻すのに20分以上かかることがわかっています。
だからこそ、コンピュータサイエンスの教授カル・ニューポートは「スロー・プロダクティビティ」を提唱しています。すべてのタスクを片づけようとするのではなく、より少ないことに、より深く取り組むという考え方です。やさしい言葉で言えば、「やることを絞って、より多くを達成する」ということです。
「セカンドブレイン」を築く
昔はアイデアを管理するのに、ノート1冊で十分でした。いまや、多くの大人はNotionやObsidian*のようなデジタルツールを使っています。作家のティアゴ・フォルテはこの方法を「セカンドブレイン」と呼びます。メモ、タスク、資料を安全に保存し、本物の脳がすべてを覚えておかなくてもいいようにするシステムです。
目標は完全な整理ではなく、自分の考えを信頼できる場所に置いておき、後から戻ってきて点と点をつなげられるようにすることです。
小さな習慣、大きな成果
「生産性」を担保するのは必ずしも新しいアプリだけではありません。ときには、短い振り返りの時間こそが最良のツールです。『Online Learning Journal』に発表された研究では、学んだことについて「振り返り」を行なった学習者は、より深い理解と批判的思考スキルを得たことが示されました。
1日5分でも大きな違いを生みます。ノートに短いメモを書いてみる。ポッドキャストを一時停止してアイデアを書き留める。ことわざのとおり「“a little goes a long way.”(少しでも大きな効果につながる)」のです。
今日の学びの姿
生涯学習は、必ずしも別のコースを始めることやオンラインプログラムを修了することを意味しません。現実には、こんなふうに見えることが多いのです。
・週に1つ短い日記を書いてみる
・ポッドキャストを聴き、新しいフレーズを1つ書き留める
・シンプルな「デジタルガーデン*」を作り、アイデアを育てる
・コーヒーがなくなった後も記憶に残るような会話をする
大人の学びはゆっくりしていて、直線的ではなく、中断に満ちています。しかし同時に、それは自分でペースを決め、何が大切かを選べる自由でもあるのです。
最後に
あなたがNotionに入力していようと、ノートに書きなぐっていようと、Roamでプロジェクトを管理していようと、一番大切なのは「どう使うか」です。学びに意図と思慮深さを持ち込むとき、それは人間が起こす最も力強い行動の一つになります―知識だけでなく、自分が何者になるかまでを形づくるのです。
・Notion(ノーション):ノート、タスク、データベースなどを一体化して管理できるデジタルツール。世界中の学生や社会人に使われている。
・Roam Research(ローム・リサーチ):リンク型のメモアプリ。ノート同士をつなげて、アイデアや情報を整理できるのが特徴。
・Obsidian(オブシディアン):リンク機能を活用できるノートアプリ。Markdown形式で書かれたノートを相互に結びつけ、アイデアや知識をネットワークのように整理できるのが特徴。
・デジタルガーデン(Digital Garden):アイデアやメモをオンライン上に置き、少しずつ育てていくノート術のこと。完成品のように整った文章ではなく、思いつきや途中の考えを書き残し、後でつなげたり発展させたりできるのが特徴。
menu_book参考文献
emoji_objects本記事のイチオシ!フレーズ
「点と点を線でつなぐ」 → バラバラの情報や出来事を組み合わせて、一つの意味や全体像を理解すること。
「点と点をつなぐ」という比喩は、スティーブ・ジョブズがスピーチで使ったことにより広まりました。「経験はその時点ではバラバラに見えるが、あとで振り返ったときに意味を持ってつながる」という人生観を表しています。