日本と海外のクリスマスはどう違う? 言葉と文化から季節を見つめる
12月に入ると、街が一気にクリスマスムードになりますね。
日本でも欧米でも「クリスマス」は一年の中でも特別な行事として親しまれていますが、その過ごし方や受け止め方は国や地域によって少しずつ異なります。
たとえば、日本では街のイルミネーションやケーキを楽しんだり、恋人同士で過ごす日として広く定着しています。一方、欧米ではクリスマスは家族が集まる大切な行事として祝われることが多いと言われています。こうした違いの背景には、宗教との関わりや、どの行事を一年の中心に置くかといった文化的な習慣が影響しているようです。
本記事では、日本と海外のクリスマスの違いを、言葉や習慣の面から比べてみます。同じイベントをどのように過ごしているのかを知ることで、クリスマスという行事が持つ多様な姿が見えてくるかもしれません。
Christmas の言葉と起源
「Christmas(クリスマス)」という言葉は、もともと “Christ(キリスト)” + “mas(ミサ/礼拝)” という言葉から来ています。つまり本来は宗教行事として始まったお祝いの日です。とはいえ、現代ではキリスト教を信仰しない人々にも広く親しまれており、宗教的な意味をあまり意識しない形で祝う国や地域も多くなっています。
さらに、 “Xmas” という略記もよく見かけますよね。これは、キリストを示すギリシャ語の頭文字 “Χ(カイ)” に由来するとされています。“Christ” を “X” で表す習慣があり、中世の写本でも “Christ” の部分が “X” に置き換えられていました。その流れから “Xmas” という表記が生まれたと言われています。
ただし、現代の英語圏では、公式文書やフォーマルな場面では “Christmas” が好まれることが多く、“Xmas” は広告やSNS など、カジュアルな文脈で使われる傾向があると言われています。

“Merry Christmas” と “Happy Holidays” ― 多文化社会が生んだ表現の広がり
さまざまな文化や宗教をもつ人々が共に暮らす英語圏では近年、季節のあいさつにも多様性への配慮が見られるようになっています。
そのひとつが、“Happy Holidays”という挨拶です。12月にはクリスマスのほかにも、ユダヤ教の Hanukkah(ハヌカー)、アフリカ系アメリカ人の文化的祝日 Kwanzaa(クワンザ)、そして New Year(新年) など複数の祝日が重なっており、人々が祝う行事は家庭や宗教ごとに異なります。
こうした多様性に配慮して、特定の宗教に偏らない表現として“Merry Christmas”の代わりに “Happy Holidays” が使われる場面が増えています。ショッピングモールの掲示や企業のメール、公共施設のメッセージなどでは、さまざまな背景を持つ人に向けて“Happy Holidays”が選ばれています。
一方で、伝統的なあいさつである “Merry Christmas” も、家族や友人同士、親しい人とのやり取りではいまも広く親しまれています。こちらはあくまでも「クリスマスを祝う人」への言葉で、キリスト教文化に根づいた表現です。
クリスマスそのものを祝う伝統的なあいさつ → “Merry Christmas”
宗教に依存しない、冬の祝日全体を祝う表現 → “Happy Holidays”
というように、含まれる意味や使われる場面の違いを理解した上で、目的や相手に合わせて挨拶を使い分けるのが理想的ですね。
日本のクリスマス文化 ― イベントとしての楽しみ
日本におけるクリスマスは、宗教的な意味を持つお祝いというよりも「冬のイベント」「華やかなパーティーを楽しむ日」と言うイメージです。
多くの日本人にとって、クリスマスは恋人や友人と特別な時間を過ごす日であり、子どもにプレゼントをあげる家族サービスの日、などとも言われますね。
そして、食卓に並ぶものも日本ならでは。欧米で言えば「ローストターキー」が定番のクリスマス料理ですが、日本では骨付きチキンやフライドチキン、クリスマスケーキ(ショートケーキなど)が定番となっています。
実は、この「チキン × ケーキ」の組み合わせが広まったのは、1970年代のファストフードチェーンの広告戦略がきっかけ、という説もあります。つまり、日本のクリスマス習慣は、昔からの伝統というよりも戦後以降に新しく形成された文化、と言えるかもしれませんね。
とはいえ、クリスマスは一大イベントとして日本独自の楽しみ方で普及し、海外とは違った雰囲気を形づくっています。
欧米を中心とした海外のクリスマス文化 ― 伝統と再会の日
一方、欧米の多くの国では、クリスマスは家族が集まり、伝統的・宗教的な行事として祝われるのが一般的です。
伝統的には、12月25日の朝(または24日の晩)に家族で集まり、豪華な食事やプレゼント交換、教会での礼拝を行うのが定番。ローストターキーやハム、ローストビーフなどを中心に、スタッフィング(詰め物)やグレイビーソース、クランベリーソースなどを用意する家庭が多いようです。
さらに、クリスマスの特別感を演出するデザートやお菓子にも、国ごとに伝統があります。たとえばイギリスでは「ミンスパイ」、ドイツでは「シュトーレン」、イタリアでは「パネトーネ」といった甘い菓子がクリスマスには定番とされることも。
また、海外ではクリスマスが家族や親戚の「再会」の場になることも多く、子どもから大人まで、世代を超えた時間を過ごすのが一般的です。多くの国で12月25日は公休・祝日であるため、遠く離れて暮らす家族や親戚が集まりやすいという事情もあります。
こうした「伝統」「家族」「宗教/信仰」「再会」といった要素が、海外のクリスマスを単なる12月のイベント以上の重みある行事にしています。
クリスマスから新年へ
日本では、12月25日が終わると街の雰囲気が一気に変わります。翌日にはクリスマスの飾りが片づけられ、代わりに門松やしめ飾りなど、お正月に向けた飾りつけが並び始めます。このスイッチが切り替わるようなスピード感は、家族が集まる大きな行事の中心がクリスマスではなく“お正月”にあるためです。恋人や友人と過ごすことも多いクリスマスに対して、年末は各家庭ごとに習慣が定着しており、12月後半は「家族で新年を迎えるための大切な期間」という意識が根付いています。
一方、欧米など多くの英語圏では、クリスマスから新年にかけての時期を “holiday season(ホリデーシーズン)” として、ひとつのまとまりで祝う傾向があります。クリスマスの飾りは年末までそのまま残され、国や家庭によっては年明けまでツリーを飾ることもあります。長い休暇に入る人も多いため、同僚やクラスメイトなどしばらく会わない相手には “Merry Christmas and Happy New Year!” とまとめて伝えることがよくあります。
こうした違いの背景には、年中行事の位置づけの差があるとされています。英語圏でクリスマスが担う「家族との時間」や「伝統を大切にする期間」は、日本ではお正月にあたります。英語圏ではクリスマスの流れをゆるやかに引き継ぎながら新年を迎えるのに対し、日本では年明けの大きな行事に備えるため、クリスマス後の切り替えが早くなっているのだと言えるでしょう。
まとめ
クリスマスの楽しみ方や新年の迎え方は、国や文化によってさまざまに異なり、挨拶の選び方ひとつにも、文化や生活のリズムが映し出されます。
“Merry Christmas” “Happy Holidays”“Happy New Year”それぞれの表現の背景を知ると、普段耳にするフレーズも少し違って感じられるかもしれません。
これからクリスマスを楽しむ方も、新年に向けて準備を始める方も、ぜひこの季節ならではの文化の違いに目を向けてみてください。
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