輝きの代償:〈“Well Woman” Economy〉の実態

英文記事執筆:SAKURACO / 翻訳:POLYGLOTS magazine編集部
セレブリティたちは、もはや服だけを売っているのではありません。彼女たちは「ウェルネス」を売っています。10 年前は、ファッションが主役でした。今日では、ウェルネスが主役の座に立っています。新しいアプリは、よりよいワークアウトを約束し、ピカピカのボトルはあなたの人生を「デトックス」すると語りかけ、有名人は「アダプトゲン*」を含むスーパーラテをすすります。この流行語(アダプトゲン)を正確に定義できる人は多くありませんが。メッセージは至るところにあり、そしてとても単純です。「ただ見た目が良いだけではだめ。強く、落ち着いて、輝いて、そしてたぶん、より若くなくちゃ」。
これは、かつてのファッションが提示していた約束からの大きな転換です。素敵な服は、一晩だけあなたをおしゃれにしてくれました。一方、ウェルネスが示すのは、もっと大きな変化です。サプリメント、ジュース、スキャン、血液検査、瞑想アプリ、ミールキット、フィットネストラッカーといった「正しいもの」を買えば、身体と精神を変えることができる、という考え方です。パッケージは美しく、使われる言葉は柔らかく、説得力があります。しかし、その輝きの内側には疑問があります。多くの製品は、科学的に十分検証されていない主張をしています。美しいボトルの中身は、かつての「スネークオイル」-効くように聞こえるが、実際には効果の乏しい治療法 -である可能性があります。売り文句はしばしば、私たちの恐れ-老い、体重、ストレス、そして人生が自分の手に負えなくなっているという感覚-に訴えかけます。
そして、この規模は小さくありません。グローバル・ウェルネス・インスティテュートは、2024 年におけるウェルネス経済の規模を 6.8 兆ドルと推定しており、今後も成長が続くとしています。これは、私たちが日常的に話題にする多くの産業よりも大きな規模です。
文化的な側面も重要です。多くの都市では、カフェでアクティブウェア*を着ていることが当たり前になっています。ボトックスが、気軽な週末の予定のように語られることもあります。これらの選択は、それぞれ単体では「悪い」ものではありません。しかし、それらが重なることで、静かな圧力が生まれます。生産的であれ、穏やかであれ、年を取らないでいろ、輝いていろ、という圧力です。ウェルネスブランドは表面上は完璧に見えます。滑らかな肌、落ち着いた目、整った朝のルーティン。そして、「健康である」ためには、「魅力的である」必要もある、と言うのが暗黙のルールになります。しかし、本当の健康は、雑誌の表紙のような見た目とは限りませんし、200ドルのレギンスを必要とするものでもありません。
ハイファッションがより民主化されていく一方で、つまり、ランウェイがオンラインで配信され、トレンドが一夜にして模倣されるようになる一方で、ウェルネスは排他的なものになっていきました。それは、希少なハーブ、古代の儀式、「プロトコル」、限定メンバーシップといった私的な言語を用いており、その語彙自体が距離を生み出します。神秘的で、高価で、常に少し手の届かないものとして。
それでも、人々がそこに参加する理由は現実的です。私たちは座りすぎています。超加工食品に囲まれています。ストレスは途切れることがありません。医療制度は忙しく、予防には私たちが持っていない時間が必要です。ウェルネスは、迅速な答えと美しいブランディングによって、その隙間に入り込みます。しかし、その価格と圧力は、往々にして、それを最も必要としていない人々、すでに良質な食事、ジム、医療へのアクセスを持っている人々に向けられています。
そこにはジェンダーの分断もあります。一部の男性テック創業者たちは、寿命について声高に語ります。厳格なルーティンや過激な実験によって、より長く生きるという話です。一方、女性に向けられる約束は異なります。「永遠に生きる」ではなく、「戻る」ことです。出産前の身体へ、更年期前へ、過去の自分へ。時間は前にしか進みませんが、広告は、正しいものを買えば時間を逆戻りさせられるとささやきます。それは疲弊させられるゴールであり、費用もかかり、しかもそのゴールは常に先へ先へと移動していきます。
少し距離を取った視点が助けになります。この 10 年間で、ウェルネスは世界の GDP の約 2 倍の速さで成長しました。ビジネスにとっては良いことですが、私たちの神経にとっては、必ずしもそうとは言えません。トレンドは次々と変化します。(ボーンブロス*、ココナッツオイル、ターメリック、次は何でしょうか。)あなたの神経系が好むのは、追いかけることではなく、安らぎです。現実の生活の中で、理にかなっていて、やさしく、持続可能なものを選びましょう。毎日の散歩、楽しめて消化しやすい食事、十分な睡眠、定期的な健康診断、人とのつながり。あなたの本当の輝きは商品ではありません。それは実践です。
グリーンジュース*が好きなら、楽しめばいいのです。もしあなたが自分の飲んでいるサプリメントの名前を言うことができないなら、少し立ち止まってもいいかもしれません。ウェルネスは、幻想を売るのではなく、あなたの実際の必要を支えるときにこそ、価値を持ちます。輝きは素敵です。しかし、安らぎも同じくらい素敵です。そして安らぎは、多くの粉末製品とは違って、無料なのです。
*アダプトゲン(adaptogens)
ストレスに対する体の適応力を高めるとされる天然由来の成分。ハーブや植物が多く、心身のバランスを整える目的で用いられることがある。
*アクティブウェア(activewear)
運動や体を動かす場面に適した衣類の総称。伸縮性や通気性に優れ、近年は日常着としても着用されている。
*ボーンブロス(bone broth)
牛や鶏などの骨を長時間煮込んで作るスープ。ミネラルやコラーゲンを含むとされ、健康志向の人々の間で注目されている。
*グリーンジュース(green juice)
野菜や葉物を主原料とした飲料。栄養補給を目的として飲まれることが多く、健康習慣の一つとして広まっている。
emoji_objects本記事のイチオシ!フレーズ
「効果のない薬」「インチキな製品・まがい物」「当てにならない話」
効能のない薬を万能薬のように売り歩いた行商人に由来する表現で、実際には効果や根拠がないのに、あたかも価値があるかのように売り込まれるものを指します。薬や商品だけでなく、信用できない主張やうまい話を批判的に表す比喩としても使われます。
Pretty bottles can hide old “snake oil”.
「きれいな瓶は、昔ながらのインチキ商品を隠してしまうことがある。」

