なぜ若者はMBTIに夢中なのか? 性格診断が示す“つながり”の文化
英文記事執筆:Sean Furniss / 翻訳:POLYGLOTS magazine編集部
東アジアでのMBTIの人気
MBTI(Myers-Briggs Type Indicator)テストは、人々を16の性格タイプに分類する性格診断であり、特に東アジアで急激に人気が高まっています。2022年のHankook Researchによる調査では、19〜28歳の韓国人の10人中9人以上がこのテストを受けたことがあると報告されています。このテストは、質問票に答える形式で、性格を4つの二分法に基づいて分類します。たとえば、「内向型(I)」か「外向型(E)」かというようにです。MBTIは韓国の社会文化に完全に浸透しており、多くの若者が各タイプの特徴を理解していて、それが人間関係、仕事、習慣などあらゆる面に影響すると考えられています。
人々がこのテストの結果に強く惹かれるのは、自分のアイデンティティと診断結果がどのように一致するかを見ることが非常に興味深いからです。そして、多くの人がこのMBTIの結果は自分に「とても当たっている」と感じます。この現象は「バーナム効果(Barnum Effect)」*によって部分的に説明できます。これは、人々が非常にあいまいな説明に対しても個人的に共感を感じやすく、特にその説明が肯定的なものである場合に顕著に現れる心理的傾向です。
この人気の理由は、テストを受けて自分の性格を見ることが面白いという点だけによるものではなく、東アジアにおける社会的な交流の中でのMBTIの役割にもあります。MBTIは「ソーシャル・ルブリカント(social lubricant)」、つまり社会的な潤滑油のようなものだと表現されています。テストのファンたちは、人々が共通点を探そうとして気まずくなる時間を過ごす代わりに、MBTIは誰もが知っていて、関わることができるものだと言っています。
なぜアジアでこれほど人気なのか
MBTIテストは、第二次世界大戦中にアメリカの女性たちを適職に導くために、2人のアメリカ人によって開発されました。しかし、現在では欧米での人気はアジアに遠く及びません。その理由のひとつに、アジアにおける「集団カテゴリーによる判断」の文化的傾向があると考えられます。西洋に比べて、家族、職業、国籍といった集団的な属性に基づいて人を判断することが、アジアでは文化的により受け入れられています。このような考え方の土台が、MBTIが社会に組み込まれることを容易にしました。また、アジアでは「集団の中での個人の役割」も重視されるため、MBTIは調和を保つために自分の役割を受け入れることを手助けしています。
MBTIが行きすぎるとき
その人気の一方で、MBTIが東アジアの国々の文化に深く入り込みすぎていることを批判する声も多くあります。大きな議論を呼んだきっかけとなったのは、MBTIがビジネスの場に持ち込まれたときでした。韓国のあるカフェが、求人広告で「特定のMBTIタイプの応募を受け付けない」と明記した投稿がSNSで拡散し、物議を醸しました。他にも、就職面接でMBTIタイプを尋ねられたという報告も多く、2022年の大統領選ではユン・ソギョル氏が、自身が「ENFJ型」であることを選挙運動でアピールし、同じタイプのオバマ元米大統領と自分を比較しました。
科学界では、MBTIは疑似科学(pseudoscience)と見なされており、日本でかつて流行した「血液型性格診断」や占星術と同列に扱われることも多いです。結局のところ、MBTIの社会的浸透は興味深い現象ではありますが、オンライン上の多くの人々は、それが職業や政治といった重要な領域にまで入り込むとき「一線を越えた」と感じるのです。
バーナム効果(Barnum Effect)*:心理学で知られる現象のひとつ。人は誰にでも当てはまるようなあいまいで一般的な性格の説明を「自分のことだ」と感じやすい傾向を指す。
ソーシャル・ルブリカント(social lubricant)*:人と人との間の緊張をほぐし、会話や関係をスムーズにするきっかけや話題のこと。
emoji_objects本記事のイチオシ!フレーズ
大幅な増加/急激な上昇
The MBTI test has seen a massive surge in popularity. (MBTIテストは人気が急激に高まっています。)「massive」は「非常に大きな」「圧倒的な」、“surge” は「急上昇」「急増」「殺到」を意味し、短期間で大きな変化が起きたときに使われる表現です。 数量・需要・人気・価格・アクセス数など、何かが一気に増えた場面でよく使われます。