いま、「ものづくり」がアツい? 日本の「メイカー」文化とは
英文記事執筆:Everett Ofori / 翻訳:POLYGLOTS magazine編集部 / 写真:kainam / Shutterstock
かつて、男性たちが自分の手で木を伐ってテーブルやいすを作り、女性たちは編み針を使って、愛する人のためにあたたかいショールやセーターを編んでいた時代があったことを、あなたは聞いたことがあるかもしれません。
今日では、中国からチリにいたるまでの工場があらゆる種類の製品を大量生産しているため、「メイカー」、すなわち自分の手で製品を作る人──それがオリジナルのものであれ、既存のデザインを応用したものであれ──は、すでに過去の存在になったと思われるかもしれません。
しかし、実際のところ、それはまったく真実ではありません。
たしかに、日本の伝統工芸、たとえば漆器、和紙、手づくりの陶器などの名匠たちは、これらの技を身につけるために何年も修行しようとする若い弟子を集めるのに苦労しています。
とはいえ、それは日本の若者たちが手仕事に興味を持っていないということを意味しません。
多くの若者が、批判的に考え、新しいアイデアを試し、道具を使って家具やファッションアイテムからロボットや革新的なガジェットにいたるまで、さまざまな製品を設計・製作することの喜びを見いだしています。
学校とFabLab(ファブラボ):新しいかたちの教室
いくつかの高校では、生徒たちがルーター、ドリル、のこぎり、レンチ、電子工作キットなどを使い、自分のアイデアを形にできるスペースを設けています。
これらの作業室は、多くの場合、小さなファブラボ(FabLab)*に似ています。なぜなら、そこでは伝統的な手仕事の技と、3Dプリンターやレーザーカッターといったデジタル工作技術とが組み合わされているからです。
大学のレベルでは、東京科学大学(旧:東京工業大学)や慶應義塾大学などの機関が、実際に手を動かして学ぶことを促進するイノベーション・ハブを立ち上げています。
こうしたアプローチは、「ものづくり」という日本の長年の伝統を受け継いでいます。
DIY文化とコミュニティスペース
メイカーの動きはまた、必要な道具や材料を利用できるDIYショップやオープンワークショップによって支えられています。
秋葉原はいまでも、初心者から専門家までを対象にした電子部品店やパーツ供給店が並ぶ、愛好家や革新者たちの拠点であり続けています。
秋葉原の外でも、FabCafe TokyoやMakers’ Base Tokyoといった場所が、デザイナー、学生、趣味人たちのあいだで協働、技能の向上、知識の交換を行う場となっています。
雑誌とYouTube:思考を刺激するもの
ほとんどのメイカーは、革新的なアイデアを独占できる個人など存在しないことを理解しています。
そのため、国内外の主要なメイカー向け雑誌を購読したり、ロボティクス、Arduino、その他の創造的な設計ツールに関する手頃なチュートリアルを活用したりすることがあります。
印刷媒体に加えて、多くの人はYouTubeや同様のプラットフォームにも目を向けています。そうした場所を頻繁に訪れ、他の人々の作品を観察し、自分自身の創作プロジェクトへの着想を得ているのです。
メイカーフェア:アイデアが形になる場所
メイカーがすばらしいものを作り上げたあと、それをどこで披露できるのでしょうか。
日本各地で開催されるMaker Faire TokyoやMaker Faire Kyotoといったイベントでは、学生、専門家、そして趣味で活動する人々が、自作のドローンからインタラクティブアートまで、さまざまな作品を発表する機会を得ています。
これらのフェアは、創造性、協働、そして想像を現実の形へと変えることの達成感を祝う場なのです。
楽しさに満ちた未来
日本のメイカー文化は、単なるDIYへの熱狂ではありません。なぜならそれは、技能・創造性・革新を重んじるという国の伝統を受け継いでいるからです。
学校や地域社会がファブラボ、ワークショップ、メイカーイベントへのアクセスを拡大するにつれ、新しい世代の創り手たちが出現しています。彼らは、伝統的な手仕事とデジタル技術を橋渡しし、「ものづくり」の精神が日本の若いメイカーたちの手の中でいまも力強く息づいていることを示しています。
FabLab(ファブラボ):個人による自由なものづくりの可能性を広げるための、デジタル工作工房とそのネットワーク。2000年頃に米国ボストンでスタートし、現在世界90カ国1,000カ所以上に広がっている。
emoji_objects本記事のイチオシ!フレーズ
「実践的な」「直接体験できる」
「hands-on」は実際に体を使って作業したり体験したりすることで学ぶ、実践重視のニュアンスを持つ表現です。理論よりも現場での経験を通して理解を深める状況に使われます。 Many schools are creating innovation hubs that promote learning through hands-on creation. 「多くの学校が、実践的な創作活動を通して学習を促すイノベーションハブを作っている。」