国内外のトレンドが一言に!2025年を象徴する日本語 / 英語を見てみよう!

2025年の今年の漢字は「熊」
毎年年末に発表される「今年の漢字」は、その年に世の中で起きた出来事や流行、社会動向を表した一文字が、投票で決定します。
先日発表された2025年の漢字は「熊」でした。日本各地で熊の出没が相次ぎ、人の生活圏でも目撃されることが増えた一年でした。人身被害や農作物への影響もあり、熊の問題が社会的な関心を集めました。
こうした背景から選ばれた「熊」は、英語では “bear” と言い、経済や投資の世界でも重要な意味を持っています。
金融市場では、相場が全体的に下がり続けている状態を 「ベアマーケット(ベア相場)」 と呼びます。これは、日本語では「弱気相場」や「下げ相場」と言われることもあります。熊が上から下に向かって爪を振り下ろす動きをすることから、相場が下落していく様子を熊の姿に重ねて、この名前が使われるようになりました。
ベアマーケットには、はっきりした数字の基準はありませんが、多くの場合、市場全体が長い期間にわたって下落傾向にあるときに使われます。株式市場や FX など、さまざまな金融市場で使われる言葉です。
また、ベアマーケットの反対の意味を持つ言葉に 「ブルマーケット(ブル相場)」 があります。こちらは強気市場や上げ相場を指し、牛が下から上に角を突き上げる動きから、相場が上昇するイメージと結びつけられています。
自然界でも、社会でも、そして経済の世界でも登場する「熊」という存在は、2025年を象徴する漢字として、さまざまな意味を重ね持つ一文字だったと言えるのかもしれません。
2025年の今年の英単語は?
さて、日本の「今年の漢字」と同様に、海外にも「今年の英単語」を発表している媒体がいくつかあります。どの媒体も、単なる流行語ではなく、その年を特徴づけた社会動向や世界的な出来事を反映し、その単語が1年を通してどのように変化したかを解説しています。
今回は、 “Word of the year” (今年の英単語)を発表している、「dictionary.com」「The Cambridge Dictionary」「Oxford」の3つの媒体を取り上げて、2025年の英単語とその意味を分析していきましょう。
“67” Dictionary.com’s 2025 Word of the Year
https://www.dictionary.com/articles/word-of-the-year-2025
“67” は、 “6-7” や “six-seven” とも書かれ、「シックスセブン」と発音します。
α世代の学生やインターネットを中心に流行したこの単語には、実は明確な意味が存在しません。「まあまあ」といったニュアンスで使われたり、生活の中で6と7の数字が連続して登場した際に用いられます。
曖昧な意味で、言葉遊びのように使われる新しいスラングです。
“67”の由来になっているのは、アメリカ人ラッパーSkrillaの”Doot Doot (6 7)”という曲ではないかと言われています。この曲の歌詞では、フックで「six-seven(シックス・セブン)」と歌われ、ミュージックビデオはYoutube上で2000万回以上再生されています。
また、NBA選手のラメロ・ボールの身長が6フィート7インチであることから、バスケットボールの映像とこの楽曲を合わせた動画がSNS上で流行し、ネットミーム化したことでさらに若い世代に浸透しました。
インターネット上から生まれた言葉が、α世代(2010年〜2024年生まれ)やティーンエイジャーに瞬く間に浸透し、学校はもちろんスポーツ業界でも耳にするようになりました。意味を持たない単語でありながら、このトレンドやミームを使うことが、社会において「分かっている側」にいることを示すサインとしても機能しているようです。
“parasocial” The Cambridge Dictionary’s 2025 Word of the Year
parasocial(パラソーシャル)は、日本語では「パラソーシャル」「パラソーシャル関係」と呼ばれ、実際には面識のない有名人や、書籍・映画・テレビシリーズなどの登場人物、あるいは人工知能(AI)とのあいだに、あたかも個人的なつながりがあるかのように人が感じてしまう関係のことを指します。
この言葉は、元々1956年に社会学者リチャード・ウォールとドナルド・ホートンによって、「テレビに登場する芸能人との関係性」を示す言葉として提唱されました。
近年、SNSの発展により、パラソーシャルな関係を利用したマーケティングが増加したことや、その関係を助長するインフルエンサーの倫理観を巡って、この言葉が再び用いられるようになりました。
そして2025年、生成AIのチャットボットが急速に普及したことで、人格を持つように振る舞うAIに対する一方的な関係を危惧する言葉として再定義され、様々な場所で用いられました。
2025年7月には、xAIがアニメキャラクターを模したGrokと会話できる「コンパニオンモード」を発表し、ジェスチャーや表情、好感度などの機能でユーザーとコミュニケーションをとるAIチャットボットが話題になりました。
こう言ったAIチャットボットとの関係は、ユーザーをパラソーシャルな関係に導き、特に未成年者のメンタルヘルスに対して有害であると指摘されています。
実際に、未成年のユーザーがAIチャットボットに自殺の計画を相談したり、恋愛感情を抱いてしまう事例が発生しています。
12月には、米国の州司法長官グループがマイクロソフト、メタ、グーグルなどの大手IT企業13社に対し、有害な「チャットボットによるパラソーシャルな関係」から未成年者を守るための適切な保護策をとるよう求める書簡も公開されました。
“rage bait” Oxford Word of the Year 2025
https://corp.oup.com/word-of-the-year/
“rage bait”(レイジ・ベイト)は、人をいら立たせたり、挑発したり、不快にさせたりすることで怒りや憤りを引き起こすよう、意図的に作られたオンライン上のコンテンツのことです。
“Rage”(怒り)と “Bait”(餌、おとり)という2つの英単語の組み合わせでできている言葉で、インターネット上の特定のページや、SNSのアカウントへのアクセス数やエンゲージメントを増やすことを目的としたものを指します。
この言葉は、2002年に初めてオンライン上で使われたことが確認され、当時は、追い越しを求めてライトを点滅させられた運転手が示す意図的な「煽り」を指す言葉として使われていたと言われています。そこから、「意図的に相手をいら立たせる行為」という側面が拡大してインターネットスラングへと発展し、「怒り」で注意を引いた、拡散されやすい投稿を指す言葉として使われるようになりました。
2025年は、社会情勢に対する不安や、オンラインコンテンツをめぐる議論、メンタルヘルスへの懸念が中心となっていました。そうした背景も影響し、この単語の検索数は過去12か月で3倍に増加しました。専門家たちはインターネット上のrage baitが、ユーザーに対してどのような影響を与えているのか、また、どのように対処していくべきなのかについて積極的に議論を行っています。
まとめ
「今年の漢字」と、「今年の英単語」をそれぞれ見ていくと、2025年に起きた出来事だけでなく、社会の空気や人々の価値観、関心の方向性が浮かび上がってきます。
2025年の「熊」は、自然災害や人の生活、経済の世界にも影響を感じさせる、人々の不安があらわれた一文字でした。
一方で、英語圏で選ばれた言葉には、「67」「parasocial」「rage bait」など、インターネットやソーシャルメディアと強く結びついた言葉が並んでいます。これらの言葉からは、オンライン上でのつながり方や、注意や関心の集まり方が、私たちの生活や社会に大きな影響を与えていることが読み取れます。
流行語を「知る」だけでなく、言葉が使われた背景や、そこに私たちがどのように関わっているのかを考えてみることで、来年以降の自分自身のあり方や、社会との向き合い方が見えてくるかもしれませんね。
みなさんにとって、2025年の自分を象徴する漢字や英単語は何でしたか?
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