マイルズの法則:CEO報酬をどう考える?
英文記事執筆:Everett Ofori / 翻訳:POLYGLOTS magazine編集部
人間として、私たちは自分自身の偏見に常に気づいているわけではありません。
そのため、しばしば気づかないうちに、私たちにとって魅力的に感じるものは、単に自分がどこにいるかによって決まってしまうことがあります。
この考えは、アメリカの政府研究者ルーファス・E・マイルズに由来します。彼は1948年に、「あなたがどこに立つかは、あなたがどこに座るかによって決まる」と述べました。
彼は、人々の意見はしばしば、何が正しいかだけではなく、自分自身の立場や役割によって形づくられると観察しました。
CEOの高額報酬に対する私たちの意見が肯定的であれ否定的であれ、それもまたマイルズの法則のもとにあるのかもしれません。
このテーマについて、いっしょに探っていきましょう。
CEOという仕事は楽しそう?
何百万ドルを稼ぎ、プライベートジェットで移動し、興味深い人々に会い、豪華な休暇を取ることを嫌う人がいるでしょうか?これが多くの人が思い描くCEO(最高経営責任者)の生活です。世界で最も素晴らしい仕事のように聞こえませんか?
CEOであることの難しさ
しかし、CEOであることは常に楽しいわけでも、簡単なわけでもありません。その仕事には多くの責任が伴います。CEOは、取締役会、従業員、顧客、政府、さらにはメディアにも答えなければなりません。CEOの行動は常に注目されており、ほんの小さな失敗が大きな問題を引き起こしたり、職を失う原因になったりすることもあります。問題が発生したときには、CEOはすばやく、そして冷静に対応しなければなりません。この役職には、強い思考力と日々ストレスに対処する能力が求められます。
CEOは実際に何をしているのか?
CEOの主な仕事は、会社の将来を導くための大きな決断を下すことです。そのためには、明確な目標を持ち、会社の全員がその目標に向かって働けるよう手助けする必要があります。良いCEOは、従業員に会社の目的を信じさせ、協力し合うように促します。アイデア、資金、チームワークが整えば、物事は円滑に進みます。
優れたコミュニケーション能力が必要
優れたコミュニケーションもまた、CEOにとって重要な要素です。良い時も悪い時も、CEOは会社に関心を持つすべての人に対して明確に話す必要があります。危機が起きたとき、人々はリーダーから誠実で落ち着いたメッセージを求めます。聡明なCEOは、問題が起きるのを待ちません。日常の仕事の中に、オープンなコミュニケーションを取り入れているのです。
CEOの報酬:2つの世界の物語
毎年何百万ドルも稼ぐ著名なCEOには、イーロン・マスク(テスラ、X)、ラリー・エリソン(オラクル)、サティア・ナデラ(マイクロソフト)、サンダー・ピチャイ(グーグル)などがいます。日本では、佐藤恒治(トヨタ)や小野真木子(サントリー食品インターナショナル)などが有名であり、小野氏は大手日本企業を率いる数少ない女性の一人です。
アメリカでは、CEOの報酬は労働者の賃金よりもはるかに速いペースで上昇してきました。『フォーチュン』誌の報告によると、1965年にはCEOは平均労働者の約20倍の収入を得ていましたが、2023年にはほぼ300倍に達しました。
一方で、日本の状況は大きく異なります。CEOと従業員の間の収入格差はずっと小さいのです。多くの日本企業は、公正さや長期的なバランスを重視しています。研究によれば、日本企業は株主だけでなく、すべてのステークホルダーの幸福を考慮する傾向があります。また別の研究でも、日本企業は経営トップの報酬を決める際、従業員のニーズや意見も考慮することが多いと述べられています。
あなたはどちらの立場ですか?
CEOの報酬に対するあなたの見方は、マイルズの法則が示すように、人生における自分自身の立場に依存しているかもしれません。
もしあなたが、生活費をやりくりしている普通の労働者であれば、CEOはすでに稼ぎすぎだと考えるかもしれません。
しかし、もしあなたが、長時間働き、難しい決定を下し、大きなリスクを負っているCEOであれば、自分の報酬は自分がしていることに対して妥当だと感じるかもしれません。
では、あなたはどう思いますか?
CEOは稼ぎすぎなのでしょうか、それとも、それに値するのでしょうか。
emoji_objects本記事のイチオシ!フレーズ
生活費をまかなう/生計を立てる
“pay the bills” は直訳すると「請求書を支払う」ですが、 英語では一般的に 「日々の出費をまかなう」「生活を成り立たせる」 という意味で使われます。 つまり、電気代・家賃・食費など、生きるための基本的な支出を支払うことを指します。
menu_book参考文献
- Fernández-Aráoz, C., & Nagel, G. (2025, April 15). The real reasons the CEO-worker pay gap spiraled out of control in America—and what to do about it. Fortune
- Salazar, A. R., & Raggiunti, J. (2016). Why does executive greed prevail in the United States and Canada but not in Japan? The pattern of low CEO pay and high worker welfare in Japanese corporations. American Journal of Comparative Law, 64(3), 721–744