アイスランドの姓を持たない文化

英文記事執筆:Sean Furniss / 翻訳:POLYGLOTS magazine編集部
アイスランド独自の名前の仕組み
世界の大多数の文化では、姓は家族の中で受け継がれ、代々継承されるものです。しかしアイスランドでは、誰の子どもであるかを示すために、姓が世代ごとに変わるのが一般的です。
この仕組みは、中世の北欧世界にその起源を持っています。そこでは、人々は「パトロニミック」(父称)と呼ばれる、父親や祖先の名前に由来する姓を与えられていました。
その後、ほとんどのスカンディナビア諸国は、世界中の他の地域で一般的な、継承される姓の制度へと移行しましたが、アイスランドはこの父称制度の伝統を保ち続けてきました。
どう機能しているのか
アイスランドでは、個人の姓は通常、父親の名前に、「息子」を意味する son、または「娘」を意味する dottir という接尾辞を付けた形になります。たとえば、「デイヴィッド」という名前の男性に息子が生まれた場合、その子どもの姓は、父親自身の姓に関係なく「デイヴィッドソン」となります。
アイスランドの多くの家庭は父称を用いていますが、例外も存在します。外国にルーツを持つ家庭や、他の一部のケースでは、世界の他の国々と同様に、世代を超えて受け継がれる姓を持つ家族もいます。しかし、こうした姓は依然としてかなり珍しく、新しい世襲姓が生まれることは一般的に認められていないため、この制度は引き続き父称形式を中心としたものとなっています。
制度の管理
この命名制度は、アイスランドの「個人名登録簿」と、政府が任命した命名委員会によって管理されています。この委員会は、まだ承認リストに載っていない新しい名前について審査を行い、その名前がアイスランド語の文法、アルファベット、そして伝統と適合しているかどうかを確認します。また、その名前が、名を持つ人に害や恥ずかしさを与えるおそれがないかどうかも確認します。
この制度は厳しすぎて個人の自由を制限している、という批判もあります。一方で支持者たちは、この制度がアイスランド語の体系を守り、ますますグローバル化が進む世界の中で、父称制度の伝統を保っているのだと主張しています。2023 年時点で、この登録簿には約 4,300 の承認された名前が含まれており、国内外の新しい名前も、少しずつ追加されています。
時代への適応
しかしアイスランドは、変化する社会規範やアイデンティティのあり方を反映するために、この制度に調整を加えてきました。近年、アイスランドは、「son」や「dottir」に代わる性別中立の接尾辞として、「bur」を正式に認めました。bur は「子ども」を意味し、姓に男性・女性の区別を付けることなく、ノンバイナリーの人々がこの制度を尊重できるようにします。この形式は、単に性別に基づかない名前を好む家庭にも適用されます。
この選択肢の導入は、伝統的な命名構造が、その文化的遺産を保ちながら、現代の社会的価値観に適応できることを示しています。
名前を通じた国民的アイデンティティ
今日の世界の大半では、姓は家族のアイデンティティを示す安定した印であり、ほとんど変化することなく世代から世代へと受け継がれます。一方、アイスランドの制度は、長い家系よりも、両親との直接的なつながりや系譜を重視しています。
この制度は、世界で一般的な仕組みと比べると、時に少し複雑に感じられるかもしれません。
それでも、この制度はアイスランドの人々に強い国民的アイデンティティを与えており、自国の文化を守ろうとするこの国の姿勢を示す証でもあります。
emoji_objects本記事のキーワード
「受け継ぐ」「相続する」
「inherit」は、生まれや家族関係によって自然に与えられるものを受け取ることを表す動詞です。お金や財産だけでなく、名字・性質・文化など、選択せずに引き継がれるものにも使われます。
A surname is passed down and inherited among families.
「名字は、家族の間で代々受け継がれていく。」




