多彩な表現で、今を楽しむ
オカモトヒロヤが語る「文化、生き方、英語学習」(2/2)

進行・構成:POLYGLOTS magazine編集部 / 写真:Coco Taniya / 撮影協力:platform3

英語を使って、10倍広い世界に触れる

—— 『ボーイフレンド』シーズン2は日本だけでなく世界中で視聴され、多くの反響が届いていると思います。海外からの反応についてはどのように感じていますか。

すごく嬉しいです。ただ、海外の方に対してあまり恩返しができていないなという気持ちもあって、そこは少しもどかしさもありますね。

なので、YouTubeなどではできるだけ海外の方にも届くように工夫しています。普段は日本語で話しているんですが、字幕はすべて自分で英語をつけていて、内容も一度きちんと確認しています。

—— かなり手間のかかる作業ですよね。

そうなんですよ。正直、これをやめたらだいぶ楽になるなとは思うんですけど(笑)、そこはちゃんとやらないといけないなと思って、自分に課して続けています。

—— 海外のファンの方と日本のファンの方とで、反応の違いを感じることはありますか。

ありますね。個人的な意見ですが、海外の方のほうが、良くも悪くも反応が強い印象があります。批判的なコメントも比較的多いですし、感情の振れ幅が大きいというか。

でもそれって、裏を返せばすごく真剣に見てくれているということでもあると思っていて。いわゆる「カップリング」*の解釈なども、日本より強くこだわる傾向があるように感じます。

一方で、日本の視聴者の方はもう少し距離感があるというか、「そういう結果だったらそれでいいよね」と受け止める方が多い印象ですね。

—— コンテンツとしての楽しみ方にも違いがあるんですね。

そうですね。海外の方にとっては、番組自体が主な情報源になっていることもあって、その中での出来事がすべてになりやすいのかなと思っています。

その分、よりピュアに、そして強い感情で作品を受け取っている印象がありますね。

—— 海外のファンの方とのコミュニケーションにもつながっていると思いますが、これまでのお仕事の中で、英語を使って経験された印象的な出来事があれば教えてください。

会社員時代は海外出張が多くて、毎年4〜5カ国は行っていました。アジア圏が中心ではあったんですが、英語がある程度通じる環境だったので、現地の方と直接コミュニケーションが取れるのはやっぱり楽しかったですね。

「OWNDAYS」はタイにデザインチームがあって、英語を話せるメンバーもいたので、そこでのやり取りを任されることもありました。自分が入る前は、日本とタイのチームの間に少し距離があったらしいんですが、間に入ることでコミュニケーションがスムーズになって、すごく喜んでもらえたのが印象に残っています。

現地に行ったときもすごく歓迎してもらって、ローカルのお店に連れていってもらったりして。「英語が話せるだけで、ここまで距離が縮まるんだな」と実感した経験でした。

もちろん自分の英語も完璧に流暢というわけではなくて、ある程度伝わるところまでは理解していて、あとはもうパッションでいく、という感じなんですが(笑)。それでもなんとかなる場面が多かったです。

ただ、ネイティブの英語圏の方と話すと、やっぱり難しさは感じます。アブダビでイギリスの方と話したときは、「やっぱりちゃんと勉強しないとな」と思わされました。

—— 実務の中で英語を使うことで、学び直すきっかけにもなっているんですね。

そうですね。自分は結構、「できなかった」という実感があって初めて動くタイプで。現場でうまく話せなかったなと思うたびに、「もう一回やらなきゃ」と思って勉強し直す、というのを繰り返しています。

留学のときもそうでしたが、ある意味で自分をそういう環境に置いて、少し大変な思いをしてから学ぶ、というスタイルかもしれないです。

—— 社会人になってからも、英語の学習は続けているんですか。

そうですね。体系的に学ぶ、というよりは、日常的に触れる形で続けています。

文章を読むよりも、音や映像から入るほうが自分には合っているので、YouTubeで英語の動画を見ながら学ぶことが多いです。

—— 留学時代は、どのように英語を勉強されていたのでしょうか。

語学学校の教科書に加えて、『English Grammar in Use』*を使っていました。かなり有名な教材ですが、やっぱりすごく優秀だなと思います。

もともと日本にいるときに『瞬間英作文』*という教材を買ったことがあって、結局そのときは使わなかったんですが、構造としてはすごくいいなとは思っていたんです。

—— 『瞬間英作文』は日本語から英語に変換していくトレーニングですよね。

そうです。その考え方を応用して、『English Grammar in Use』をベースに、自分なりに日本語を起点にしたトレーニングノートを作っていました。あの教材は文法ごとに整理されているので、「これをやれば一通りの文法はカバーできる」という安心感があったんですよね。

無駄な単語も少なくて、例文の質も高いですし、内容としても信頼できるなと感じていました。

「これを一冊やり込めば、イギリスの中学生くらいの英語感覚には近づけるんじゃないか」というイメージで取り組んでいました。

—— 英語があまり得意ではなかった頃と比べて、今、英語ができることにはどのような意味があると感じていますか。

自分の中では一つはっきりした考えがあって、留学中に聞いて印象に残っている言葉なんですが、「日本語と英語では、触れられる情報量が10倍違う」という話があって。

例えばSNSで可愛い猫の動画を見たくて「猫」と検索するより、「cat」と検索した方が10倍、多様で新しい世界中の猫たちのコンテンツに出会えるということです。それだけで世界の見え方が変わる、というのはすごく実感としてあります。

そう考えると、もし英語ができなかったら、自分の成長のスピードも10分の1だったのかもしれないと思うと、少し怖いなと感じることもあります。

今はAIで簡単に翻訳もできますが、最終的には自分でそのニュアンスを分かっていないと、どうしても自分の言葉ではなくなってしまう気がしています。10年前の自分が死ぬ気で勉強してくれたおかげで、今の僕はこの10倍広い世界と繋がることができています。過去の自分に感謝しながら、これからもボーダレスに世界を楽しんでいきたいですね。

—— 英語学習中の方の中には「完璧になるまで(実用する、世界に出る、などの)一歩を踏み出せない」という方も少なくないと聞きますが、ヒロヤさんは「まず飛び込む」ことを大切にされているのですね。

はい。結局大事なのは「一次情報に触れること」だと思うんですよね。英語を完璧にすること自体が目的になってしまうと、本質から少しずれてしまうというか。大事なのは、「その先に何を見たいか」だと思うので、一次情報にアクセスできるのであれば、英語は全然完璧じゃなくてもいいと思っています。

……と、ちょっとかっこいいことを言ってきましたけど(笑)極端な話、英語圏のパートナーができたら英語力が一気に伸びると思います。もちろん友達でもいいんですけど、頻繁に英語でコミュニケーションを取る相手がいることが一番大きいと思います。

教材も大事なんですけど、それ以上に「使う環境」があるかどうかが重要ですね。

領域を横断し、自分の表現を育てる

—— 現在、SNSやYoutube、noteなどさまざまなプラットフォームを活用して発信活動をされていますが、それぞれに役割の違いはあるのでしょうか。

まだ探りながらやっている部分が大きいですね。どれか一つが跳ねればいいなと思いつつ、今は全部やってみようというスタンスです。

ただ、それぞれに役割はある程度あって、例えばnoteは以前から続けていたこともあって記事が蓄積されているので、それがきっかけで執筆のお仕事をいただくこともあります。自分が「こういうことができる人間です」という名刺代わりにはなっている感覚がありますね。

ポッドキャストはまた少し違っていて、「この人、話が面白いな」と思ってもらえたらラジオの仕事につながるかもしれない、という期待もありますし、実際に自分のコミュニケーションの幅を広げる場にもなっています。

YouTubeはどちらかというと外に開いた場で、『ボーイフレンド』の参加者同士でのコラボも含めて、人とのつながりをつくるためのメディアとしての役割が大きいですね。

—— 複数のプラットフォームで発信を続けることは、ご自身の内面にはどのような影響がありますか?

そうですね。特に文章は、自分の内省のためにやっている部分が大きいです。

文章を書くことで、ぼんやりしていた考えが整理されて、「自分はこういうことを考えていたんだ」と構造化されていく感覚があるんですよね。それがすごく大事だなと思って続けています。

一方でポッドキャストは、さっきも話に出た友人と話す中で、「自分の価値観って意外と偏っているんだな」と気づかされる場でもあります。自分とは全く違う感覚を持っている人と話すことで、世界の広さを実感できるというか。それがまた発信にもつながっていると思います。

—— ヒロヤさんは文章もとても洗練されている印象ですが、どこかで学ばれたものなのでしょうか。

理系なので、実は国語は一番苦手で。読書もあまり得意ではないんです。

なので、いわゆる教科書的な文章というよりは、自分の中でのリズム感を大事にして書いていますね。言葉の並びとかテンポみたいなものをすごく重視していて、「タンタカタン、タンタンタンタンって流れで書きたいな」みたいなイメージがまず先に浮かんで、そのフローに言葉を当てはめていくというか。

だから、論理的に組み立てるというよりは、「気持ちいいリズムで書けているか」を大事にしながら文章を書いています。少し詩を書いている感覚に近いのかもしれません。

—— 多種多様の活動で、かなりお忙しい日々を送っていられるかと思います。

めちゃくちゃ忙しいです。謙遜しない。(笑)
今しかないじゃん、って思うと、寝てる暇ないなって思います。

—— 幅広いカルチャーに触れながら発信活動をされているヒロヤさんですが、今注目されているカルチャーや影響を受けている人/ものがあれば教えてください。

今一番推しているのは、bialystocks(ビアリストックス)ですね。

もともと僕、多彩に活動している人にすごく憧れがあるんです。もちろん一つのことを突き詰める職人気質もかっこいいとは思うんですけど、それってどこか少し前の時代の価値観な気もしていて。

建築の世界でも「建築一本でやらないと一流にはなれない」と言われたことがあるんですが、自分としては、いろんな領域を横断していく身軽さも一つの才能だと思っていて。そういう意味で、ジャンルを越えて活動している人にはすごく惹かれます。

bialystocksのボーカルの甫木元空(ホキモト ソラ)さんも、もともとは映画監督として活動されていて、そこから音楽に広がっていったんですよね。その流れもすごく面白いですし、何より純粋に音楽がいい。

最近どんどん知名度が上がってきていて、「やっぱり来たな」という感じがします。7月の武道館ライブにも行く予定です。

—— ヒロヤさんおすすめの曲はありますか。

「幸せの回り道」という曲がすごく好きですね。春に外で聴くと、ちょっとスキップしたくなるような感じで(笑)。

—— 音楽以外にも注目されているカルチャーはありますか。

カルチャーとして欠かせないのが「お笑い」ですね。特に同い年の「ラランド」のお二人はずっと応援しています。サーヤさんは同い年で、すごく尊敬しています。

最近実際にお会いしたんですけど、めちゃくちゃ面白い方で。いつか一緒に仕事ができる機会があったらいいな、と思っています。

あと、お笑いのフライヤー(イベント告知用のチラシ)文化もすごく面白いなと感じていて。最近のフライヤーって、なんでこんなにクオリティ高いんだろうっていうくらい凝っているじゃないですか。ああいう領域にも、いつか関わってみたいなと思っています。

—— 写真や映像などもご自身で手がけられていますが、そのあたりもお仕事の一環なのでしょうか。

まだ「プロのカメラマンです」と言い切れるほどではないんですが、アートディレクターとしてチームで仕事をする以上、一通り理解しておく必要があると思っていて。カメラや動画、ライティングなども含めて、自分で一度は全部触ってみるようにしています。

その中で写真も始めたんですが、やっぱり面白くて。実際に作品にも使っていますし、Instagramでの発信にもつながっているので、今後も続けていきたいですね。

—— 今後、特に力を入れていきたい表現や制作はありますか。

今一番やりたいのは、ちゃんと絵画として作品をつくることですね。絵の具を使って、アートの文脈の中で評価されるようなものをつくりたい、という気持ちがあります。

これまでも作品はつくってきましたが、どちらかというと立体やインテリア寄りのものが多くて、アートとインテリアの間にあるような立ち位置のものが中心でした。もちろんそれも自分の表現ではあるんですが、いわゆる一点物の「絵画」として、しっかり向き合ってみたいという感覚が強くなっています。

なので、キャンバスに向き合って作品をつくるということは、そろそろ本格的にやりたいなと思っています。

—— もう一度海外で学ぶことも考えていますか。

考えています。実は海外の大学院に行くことは、まだ完全には諦めていなくて。

建築の分野では大学院に進む人も多いので、自分がそのルートを選んでいないことに対して、どこかで少し引っかかりがあるんですよね。もう一度ちゃんと学び直したいという気持ちはあります。

—— さらに英語力を高めていくことで、やりたいことも広がりそうですね。

そうですね。例えばYouTubeも、将来的には英語で発信できるようになったら面白いなとは思っています。
ただ、今の段階だと英語で話すことで内容が薄くなってしまう感覚があるので、そこはまだ難しいところなんですが、しっかり言いたいことを英語でも伝えられるようになりたいですね。
英語で発信できるようになれば、単純に届く市場も大きくなりますし、その分可能性も広がると思っています。

とはいえ、今は目の前のことで手一杯な部分もあるので、そのあたりは今後しっかり取り組んでいきたいです。

—— 先ほど多彩に活躍されている人に憧れる、とおっしゃっていましたが、ご自身こそ、多彩な表現をされていらっしゃいますよね。今の状況を楽しんでいらっしゃるのが伝わってきます。

はい、楽しいです。全部、自分の責任でやれている感覚があるので、今が一番幸せなんです。

オカモト ヒロヤ(アートディレクター/デザイナー/建築家 等)
1995年、北海道札幌市生まれ。北海道大学建築計画学研究室を卒業。オンデーズで世界各地の店舗設計に携わったのち、チームラボのアートディレクターとしてさまざまなアートプロジェクトに参画。2026年、Netflixリアリティシリーズ「ボーイフレンド」シーズン2に参加。現在は東京を拠点に独立し、アートディレクションとデザインを軸に、空間からグラフィック、プロダクト、写真表現まで領域を横断しながら制作を手掛ける。
https://hiroyaokamoto.com/


*ユーロスター:イギリス、フランス、ベルギー、オランダ、ドイツの5か国を結ぶ国際高速鉄道。

*English Grammar in Use Raymond Murphy (著) / Cambridge University Press / 2015

*どんどん話すための瞬間英作文トレーニング 森沢 洋介 (著) / ベレ出版 / 2006

*カップリング:参加者同士の恋愛関係や、ペア・組み合わせ(CP)を指す言葉。ファン同士が「この2人はお似合いだ」「付き合ってほしい」と願うペアを指す際によく使われる。