平野と伊藤の「よけいな話」#3 伊藤さん、結婚式で完全試合達成(恋の洞窟編 その1)(1/2)

イラスト:スミアヤカ

平野と伊藤の「よけいな話」、今回のテーマは「結婚/恋愛」です。
最近結婚式を挙げた伊藤さん。平野さんも参列したということで、今回はその振り返りからスタートします。

「完全試合」と評された結婚式の裏側から、伊藤さんとお相手の出会い、マッチングアプリで始まる恋愛へ。出会い方が変わっても、恋愛の進み方は変わらない? そして伊藤さんは、なぜかひとりで「洞窟」へと潜っていきます。

今回も、お二人ならではの寄り道たっぷりでお届けします!

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「人間に化けた狐」こと平野暁人

編集部

伊藤さん、あらためましてご結婚おめでとうございます。先日結婚式の写真を拝見して、とても素敵でした!平野さんも出席されたんですよね。

平野

いやなんか忙しかったよ。忙しいっていうのは、僕は個人的に気持ちが忙しかったの。

まずね、絶対遅れたくないと思って。 人様の結婚式、大事だから、早めに行こうと思って、だいぶ時間に余裕を持って行って、それでもちょっと早かったかなと思うぐらいの時間に会場に着いて。
そしたら係の方が「はっ」てこっちを見たのね。 で、周りに誰もいないから、「ちょっと早かったですかね」って言ったら、「はい?」 って言われて。 「伊藤さんなんですけど」「えっ……はっ、始まっております!」って。

始まってた。 

伊藤

なんで?どうして? 

あれですか、披露宴の時間に多分いらしたんでしょ。

平野

そう〜。間違えちゃった。 

伊藤

間違えちゃった。ちゃんと言っとけばよかった。 

平野

人生で結婚式に出席するの2回目だから。カタギの友達があんまりいないから。だから式と披露宴があるっていうことが理解できておらず。 

なんだろうね、いつだって遅刻するんだよ。初めての時も迷子になって遅刻したし。 

伊藤

宿命。

平野

係の人がこっちをパッと見て、なんか気色ばむ感じ。「ザッ」ていう感じ。 いままでの人生で何回もあるんですよ。「こんなところに誰かいるぞ!」みたいになること。

伊藤

「人だっ!」って。

平野

「こちらへ、こちらへ」って誘導されて「すいません、すいません」って言って、(式場のドアを)パッて開けたら、もう式が終わるところだった。 

伊藤

一通り全部終わって、退場しますみたいなタイミングで。 

平野

コーラスも流れてて。

伊藤

なんかバージンロードを平野さんが、道路を鹿が横切るように「サッ」て来て、「あ、来た」と思って。 

平野

しかもさ、僕和装だったんだよね。着物だから目立っちゃってさ。 

伊藤

素敵だった。

うちの夫がそんな平野さんの様子を見て、「平野さんはなんか、人間になっちゃった狐みたいだね。」って。  

平野

なんかわかる気がする。 

伊藤

和装だったから、多分なおさらその感じがあった。 

平野

そうなんだよ。無理して人間のふりしてた。 

で、ああ〜ってなって。一応少し式を見られたから良かったけど、なんでいつもこうなのか・・・。 

伊藤

なんかね、私もそうなるから。なんかもうあ〜あ・・・みたいな時間。

平野

それで「僕、披露宴に行く資格があるのだろうか」と。

伊藤

そこまで。

平野

もう披露宴に行く資格あるのはちゃんと来た人だけなので、そういう気持ちでとぼとぼ歩いてたら、さくちゃん(桜林直子さん)が「あー!」って声かけてくれてパアッってなって。 

伊藤

さくちゃんに会えてよかった。 

編集部

テーブルが一緒だったんですか。 

平野

テーブル、一緒にしてくれたんです。 

伊藤

そのテーブルは桜林直子さん、岸本鮎佳さん、今井真実さんとジェーン・スーさんと堀井美香さんと山田詠美先生。 

編集部

すごいテーブル!

平野

あと松岡茉優さん。  

僕なんか松岡さんのラジオを聴いてたから。ラジオで知ってる人ばっかりだから。そう、堀井さんとか。なんかもう耳が忙しい。 

伊藤

「この声だ」って。 

平野

桜林さん以外リアルでお会いしたことないのに、なんかわかんないけどいつものような違うような。 面白かった。 

伊藤

みんな好き勝手やる人たちでしたね。 

平野

そう、本当に好き勝手やってて面白かった。 

堀井さんはスピーチの最中とか、結構大事なシーンの最中に運ばれてきたデザートをちらって見て、またスピーチ見て、もう一回見て、フォークを取って、むんずとして。 まだメインのお肉残ってるのに。

伊藤

プリンアラモードをむんずと。 

平野

デザート早!肉ほぼ残ってんのに、って思ってたら、それをスーさんが突っ込んでて。 で、「えー」とか堀井さんが言ってる横から、「じゃあこれ私がもらう!」みたいな感じで、スーさんが肉をひとつきで食べて。 それで爆笑してて。この女子校みたいな空間を飲みながら見てました。 

でもね、このテーブルだけでもすごい濃いんだけど、こんな大きなホールにそんな人々が、もう。

伊藤

120人。

平野

ワンダーランドだった。

伊藤

そうですね。ディナーショーができましたね(#1 AIとディナーショー参照)、実際に。 
歌も歌って。 お色直しして和装で入ってきて、奇妙礼太郎さんが来てくれて、一曲一緒に歌いました。

自分と関係のある人が、こうやって一つの空間に集まってるっていうのが初めての経験なので。なんだろう、なんか「最終回」っていう感じ。

平野

一旦最終回。 

伊藤

一旦ね。いやでも三十歳って周りもなんかそれぞれの形で一回最終回を迎えてるなっていうのはすごく最近感じますね。うん。「第一章、完」。

伊藤先生の次回作にご期待ください!みたいな。

平野

それだとなんか打ち切りになった連載みたいになっちゃうから。あなた、人気出てるから。 

伊藤

そうだった。

結婚式って、いいものかも!

伊藤

やっぱりみんな本を読んでくれている人たちばかりだから、「公開イベント」という意識でやりましたね。 

平野

うんうんうん。なんかみんなキャッキャッてしてた。 
よかったね。よかったね。すごい綺麗。可愛い。美味しい。って。

編集部

素晴らしいです。 

伊藤

いやでも本当にすごいですよね。あんなに祝ってくれるとは思わなかったです。 

平野

祝われてたね〜。 

伊藤

祝われてましたよね、私。「みんな、どっちかっていうと私のこと好きかな?」ぐらいに思ってたら、 「なんか泣いてる!」みたいな。 

平野

泣いてたね。

堀井さんと松岡さんが特にね。 

伊藤

爆泣きしてて。
「え、泣いてる!」みたいな。呼んでおいて動揺。 

編集部

お父様との印象的なシーンの写真も拝見しました。 

伊藤

そう、ハグしてた。長いハグ。四十秒ぐらい。 

平野

こっちはざわついてた。 

伊藤

そう、ずっとなんかこう(肩を持って)喋られてて。遠目から見たら「詰められてる」と思われるだろうなって思ったんですけど。 

手紙を読んだあと、花束をあげるセレモニーがあったんですけど、お父さんは来年国に帰るって言っていたから、「もう残り時間少ないですけど今度は私がセネガルに行きます」っていう手紙を読んだんです。そしたら渡した後、「パパはやっぱり帰らない、離れたくないから」っていろんな言葉でずっと言われてました。 

平野

そっか。 

伊藤

帰らないそうです。 

平野

その頃我々のテーブルでは、「長くハグしてるけど、何言ってんのかな?」とか、僕がなんか「さっきの挨拶で亜和さんが“パパ、私は悪い娘だったけど”って言ってて、お父さんはそれを聞きながら首を大きく横に振ってたから、“パパはそんなことない思ってないよ!”とか言ってるのかも?”アワは自慢の娘だよ!”みたいな」とか、勝手にアテレコしてました。

伊藤

一方、最後の謝辞で、夫のお父さんが、袴でこう「未熟な二人ですが」「叱ってやってください。」「一家の誉れであります。」って。

平野

それまで亜和さんのやりたいことをミッチミチにやるタイムで、すごいエンターテインメントショーだったんだけど、ある意味、お父さんが超えてきたよね。 

伊藤

ちゃんと「結婚式」に戻してくれた。 

平野

最後の最後で袴のお父さんが「ドン」っと天を仰いで。 なんかいいもの見ました。

伊藤

みんな良かったって言ってた。 
でも夫はそんなお父さんに冷ややかなんですよ。「あれが刺さる層は一定いるだろうな」とか言ってて。 

編集部

そんな、マーケティングみたいなことを。 

平野

なんか僕、いろんな気持ちになったけど、一番は「結婚式って良いものなのでは」って。 
あんまり良くないものというイメージを吹き込まれて育った気がするんですよ。 要するに形式的な、判で押したような祝辞があって、親が泣いたり友達がカラオケしたり、あとは空騒ぎ、非常に虚飾に満ちた場、という。

伊藤

脱いだり着たりを見せびらかして。

平野

そうそう。
でも、今回すっごくいい結婚式だった。みんながとっても楽しそうで嬉しそうで、新婦チームも新郎チームも両方ともすっごく愛されてるのが伝わってきて、みんながキャッキャッてしてて。 結婚式って、ちゃんとやるといいものなのではっていう気づきがあった。 

伊藤

もはや結婚式じゃないのかもしれないです。あれは。
私がいなくても楽しいイベントを作ろうと思ったんです。「もう一回行きたい結婚式」っていうコンセプトを掲げてたので。 

平野

全部良かったよね。新郎上司のスピーチに至るまで良かったんですよ。すごくないですか? なんか、あ、新郎愛されてるし、信頼されてるし、祝われているっていうのが伝わってきた。 

それで後日、お友達のトミヤマユキコさん(ライター・マンガ研究者・白百合女子大学准教授)に、用事があって連絡したついでに結婚式の話をしたら、「あんたそれ完全試合を見たね。」って。

伊藤

完全試合。パーフェクトゲーム。

平野

「今日あなたが目撃したのは完全試合です。間違いなく。女子校出身ですごい数の結婚式に出てきた私が言わせてもらおう。それは完全試合。」 って。

伊藤

そうです。もうこれからどの結婚式に行ってもつまんないようにしてやろうと思って、やったんです。

編集部

結果、見事完全試合達成。素晴らしいです。