デジタル世代が“ファーマーズマーケット”に惹かれる理由
翻訳:POLYGLOTS magazine編集部
ミレニアル世代*とZ世代*は、アプリ、スマートフォン、そしてオンラインショッピングとともに育ちました。ワンタップで、夕食を1時間以内に玄関先に届けることができます。けれども意外なことに、その多くが今、非常にアナログなもの -「ファーマーズマーケット*」に戻りつつあります。オンラインで生きているように見える世代にとって、木製の屋台で野菜を買うという選択は驚くほど新鮮で、まるで古いアイデアを初めて発見したかのように感じられるのです。
1. からだと地球にやさしい選択
今日の若者は、二つのことを同時に気にかけています。健康を保つことと、地球を守ることです。彼らは食品ラベルを読み、食事のトレンドを追い、スムージーの写真をインスタグラムに投稿します。同時に、気候変動や工業型農業がもたらす被害を心配しています。ファーマーズマーケットで買い物をすることは、この二つの価値観に合ったシンプルな解決策のように感じられます。自分の体のために新鮮な食べ物を得ながら、より持続可能な地域の農業を支えるのです。
実際、アメリカのオーガニック食品の売上は2023年に697億ドルに達し、その成長の大きな部分を若い消費者が支えました。彼らにとって、健康的な食事をすることは単なる個人的な選択ではありません。環境という全体像につながる小さな行動でもあるのです。
2.買い物が“体験”に変わる
最近の研究は、ミレニアル世代とZ世代が支出の方向を変えていることを示しています。物を買うよりも、体験にお金を使うことが増えているのです。たとえば、Eventbrite*の調査では、ミレニアル世代の78%が「物より体験にお金を使いたい」と答え、82%が過去1年にコンサートやフェスティバルのようなライブイベントに参加しました。
これらの世代にとって、買い物はただ「買って終わり」ではありません。1日をそのために費やすこともあります。想像してみてください。明るい蛍光灯の下で商品棚を急いで通り抜けるのと、色鮮やかな屋台をのんびり歩き、温かな笑顔で迎えられ、人々が日常の出来事をおしゃべりするのを耳にしながら、新鮮な果物を試食するのとの違いを。
ファーマーズマーケットは買い物を社会的なイベントに変えます。友人と一緒に行ったり、家族が子どもを連れて行ったり、犬でさえ参加することもあります。それは週末を楽しむチャンスであり、単なる食料を買う場所ではありません。多くの若者にとって、それは人との交流や余暇を、生活に欠かせない用事と結びつける1つの方法で、オンラインショッピングでは決して完全に提供できないものなのです。
3. 人とのつながりが生む「信頼」
再び注目されているもう一つの理由は「信頼」です。ファーマーズマーケットでは、自分の食べ物を育てた人を見ることができます。農家に土や季節のことを尋ねたり、料理のコツをもらったりすることさえできます。こうした透明性によって、地元の食べ物はスーパーのラベルよりもずっと信頼できるものに感じられます。ラベルはときに過度に整いすぎていて、かえって分かりにくいこともあるからです。
この直接的なつながりが、食べ物を“人の顔が見えるもの”にします。ニンジンを「ただの商品」から「物語を持つもの」に変えるのです。そして、フェイクニュースや広告にまみれた時代において、このような誠実さは新鮮に感じられます。
4. コスパとタイパで選ばれる場所
驚くかもしれませんが、ファーマーズマーケットは必ずしも高いわけではありません。Z世代は特にお金に注意を払っています。彼らは価格をオンラインで比較し、お得なものを探し、1円や1ドルの価値を理解しています。最近の調査は、多くの若い消費者が地元の食品を選ぶ理由が「便利で手頃だから」だと示しています。
マーケットはしばしば中心地にあり、週末に開かれ、自転車や電車で簡単に行けます。これは車を持たない学生や若い社会人にとって魅力的です。言い換えれば、利便性も価格も、もはやスーパーマーケットだけの利点ではないのです。
5. 心地よい空間とノスタルジー
最後に、感情的な側面があります。「コテージコア」と呼ばれるトレンドを見たことはありますか?それは、花やバスケット、自家製パンや田舎の午後といった、シンプルで自然な暮らしを愛することです。ファーマーズマーケットはまさにその「原点回帰」の感覚を与えてくれます。
毎日何時間もスクリーンを見ているZ世代にとって、この「オフライン」の雰囲気は心を落ち着けてくれます。新鮮な花束や素朴なパンを写真に撮ることはインスタグラム映えもしますが、体験そのものがそれ以上の意味を持ちます。それは忙しい現代生活からの小さな逃避であり、祖父母の世代の伝統へのつながりを感じることさえできるのです。
まとめ
なぜミレニアル世代とZ世代はファーマーズマーケットに戻っているのでしょうか?理由は明らかです。彼らは健康であること、信頼できる選択、楽しみ、そしてライフスタイルの充実を求めているからです。ファーマーズマーケットは、食べ物を「買うもの」であるだけでなく、「体験し、共有し、楽しむもの」に変えてくれる場所を提供します。
つまるところ、市場でニンジンを買うことは買い物以上の意味を持ちます。それは日常に小さな喜びを持ち込み(そして場合によっては良い自撮り写真も)、ただの買い物以上の意味を持つのです。かつては古臭いと見られていた木製の屋台が、今では最も新鮮なアイデアのように感じられるのはそのためです。
・ミレニアル世代(Millennials):1980年代前半〜1990年代半ば生まれ。デジタル技術の発展期に成長した世代。
・Z世代(Generation Z):1990年代後半〜2010年代前半生まれ。スマートフォンやSNSが当たり前の環境で育った世代。
・ファーマーズマーケット(farmers’ market):農家や生産者が直接、野菜や果物などを販売する市場。日本の「朝市」「産直市場」に近い。
・Eventbrite(イベントブライト):アメリカのオンラインイベント管理・チケット販売プラットフォーム。世界中でライブ、フェス、セミナーなどのイベント企画・参加に使われている。
menu_book参考文献
- https://ota.com/news-center/conscious-consumption-younger-generations-fueling-growth-organic-industry?utm_source=chatgpt.com
- https://www.wealthformula.com/blog/millennials-gen-z-shape-market/?utm_source=chatgpt.com
- https://journals.ashs.org/view/journals/hortsci/55/9/article-p1475.xml?utm_source=chatgpt.com
emoji_objects本記事の注目!フレーズ
「実はこうなんです」「でも意外なのはここからです」
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