『処刑人』コンビ、ノーマン&ショーンのインタビューから学ぶ「生きた慣用表現」

©2025 Tokyo comic con All rights reserved.

POLYGLOTS magazine独自取材「東京コミコン2025」で学ぶ英語表現の第二弾。1日目のセレブステージには、映画『処刑人』シリーズで兄弟役を演じたノーマン・リーダス氏とショーン・パトリック・フラナリー氏が登場しました。
単に俳優として共演しているだけでなく、良き友人であり続けているふたりだけに、トークは終始リラックスした雰囲気。
『ウォーキング・デッド』や『インディ・ジョーンズ/若き日の大冒険』をはじめとするそれぞれの代表作の話から、役作りへの考え方まで、ここでしか聞けないエピソードや裏話が次々と飛び出し、会場は大盛り上がりとなりました。

今回の記事では、そんなふたりのトークの中から、印象的な慣用句や比喩表現のフレーズを抜き出し、意味・使われ方・ニュアンスを分かりやすく紹介していきます。
どれも、ネイティブがインタビューや会話の中で自然に使っている言い回しばかりです。
作品やキャリアについて語る中で、どのように英語が使われているのかをあわせて見ていきましょう。

「ウォーキング・デッド」シリーズのロングヒットは「瓶の中の稲妻」?

ノーマン・リーダス(Norman Reedus)

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ドラマ『ウォーキング・デッド』シリーズで、ダリル・ディクソン役を演じ、世界的な人気を獲得。2023年からはスピンオフ作品『ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン』で主演を務めている。
映画『処刑人』シリーズでも知られ、2022年にハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム入り。近年は小島秀夫氏が手がけるゲーム『DEATH STRANDING』シリーズにも参加するなど、映画・ドラマの枠を超えて活躍の場を広げている。

Question
The Walking Dead series has been on for 15 years.
Did you ever imagine that the series would go on for such a long time?

『ウォーキング・デッド』シリーズは15年も続いていますが、こんなに長く続くと想像していましたか?

Norman
No, I had no idea. I thought they were going to kill me every week.
I never knew. I remember the moment when I realized how big it would become, but even then, I don’t think you can really predict something going on for that long.
I think it’s kind of like lightning in a bottle. It just happens.
We had the best cast and the best crew, and we were out in the woods making this show by ourselves. We were just in it to win it.
So no, I had no idea it would last this long.

いや、まったく思っていなかったよ。毎週のように、次は自分が殺されるんじゃないかと思ってた。本当に何も分かっていなかったね。
ただ、これはすごく大きな作品になるな、と気づいた瞬間は覚えている。でもそれでも、こんなに長く続くかどうかなんて、本当に予測できるものじゃないと思う。
これは、いわば「瓶の中の稲妻」みたいなものなんだ。ただ起こるときは起こる。
最高のキャストと最高のスタッフがいて、森の中で、自分たちだけでこのドラマを作っていた。とにかく全力でやるしかなかったんだ。だから、ここまで長く続くとは本当に思っていなかったよ。

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lightning in a bottle

「めったに起きない奇跡的な出来事」「偶然が重なって生まれる特別な成功」

ポイント

lightning in a bottle は、「非常にまれで、再現が難しい出来事や成功」を表す慣用句です。
直訳すると「瓶の中の稲妻」で、現実にはほぼ不可能なことをイメージさせる比喩表現として使われます。

この表現は、特にエンタメやビジネスの文脈で、「計画や努力だけでは説明できない成功」「同じ条件をそろえても再び起こるとは限らない出来事」を指すときによく用いられます。

ここでは、「『ウォーキング・デッド』の成功は、事前に予測できるものではなく、偶然が重なって生まれた特別な成功だった」という意味で使われています。

この表現を使った一般的な言い回しには、

・catch lightning in a bottle「奇跡的な成功をつかむ」
・can’t bottle lightning twice.「同じ奇跡は二度起きない」
などがあります。

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in it to win it

「本気でやっている」「全力で取り組んでいる」

ポイント

in it to win it は、「何かに参加する以上、本気で成功を目指している」という姿勢を表す口語的な慣用表現です。直訳は「勝つためにそこにいる」。

もともとはスポーツや競争の文脈で使われてきた表現ですが、現在では仕事やプロジェクト、創作活動など、幅広い場面で使われています。
「試しにやっている」「途中でやめるつもりでいる」といった態度とは対照的に、強いコミットメントを示す言い方です。

「作品づくりに対して、先を計算するよりも、とにかく本気で取り組んでいた」という、ノーマンの強い意思が感じられる表現です。

悪役とヒーロー、どちらを演じるのが楽しい?

ショーン・パトリック・フラナリー(Sean Patrick Flanery)

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1992年、テレビシリーズ『インディ・ジョーンズ/若き日の大冒険』で主人公インディ・ジョーンズ役に抜擢され注目を集める。以降、『パウダー』や『ソウ ザ・ファイナル 3D』など幅広いジャンルの作品に出演。
近年はドラマ『ザ・ボーイズ』でガンパウダー役を演じるなど、印象的な役柄を重ねている。代表作としては、ノーマン・リーダス氏と共演した映画『処刑人』シリーズが知られ、2024年には待望の第3弾製作が発表され、大きな話題となった。

Question
So which do you enjoy more, playing the villain or the hero?

「悪役とヒーローでは、どちらを演じるほうが楽しいですか?」

Sean
Man, I’ve got to tell you, nothing is as fun as mustache-twisting.
I don’t know if that phrase exists in Japanese, but the bad guy, the old-school bad guy who would twist his mustache, has so much flavor.
There’s such a wider range, and the amount of things you’re allowed to do when you play a bad guy is incredible. I mean, some of my favorite stuff is character work.

And having said that, I love playing Indiana Jones.
That opened up every door that’s open to me today.
Without Indiana Jones, I wouldn’t even be on this stage.

いや、本当に言わせてもらうと、口ひげをくるくるひねるような悪役ほど楽しいものはないよ。この表現が日本語にあるか分からないけど、昔ながらの悪役、口ひげをひねるようなタイプの悪役には、とても味わいがある。
悪役は表現の幅が広くて、演じるときに許されることの範囲が本当に大きい。正直、僕が一番好きなのはキャラクター作りなんだ。

とはいえ、インディ・ジョーンズを演じるのも大好きだよ。あの役が、今の自分につながるすべての道を切り開いてくれた。インディ・ジョーンズがなければ、僕はこのステージに立ってすらいないからね。

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mustache-twisting

「いかにも悪役らしい悪役」

ポイント

mustache-twisting は、昔の映画や漫画に登場する、口ひげをひねりながら悪だくみをするような「典型的な悪役像」をもとにした比喩表現です。

実際の動作を表すのではなく、善悪がはっきりしている、様式的なヴィラン(悪役)を指す言い方として使われます。多くの場合、ややユーモラス、あるいは愛着を込めたニュアンスを含みます。

ここでは、「分かりやすい悪役を演じることは、表現の幅が広く、演じがいがある」という意味で使われています。

例文

・a mustache-twisting villain
「いかにも悪役なヴィラン」

・He plays a classic mustache-twisting bad guy.
「彼はいかにも悪役というタイプのキャラクターを演じている」

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that opened up every door that’s open to me today

「そのおかげで今の私がある」

ポイント

この表現の中心にある open doors は、「機会を与える」「新しい可能性につながる」という意味で使われる比喩表現です。人生やキャリアにおけるチャンスを「開いたドア」に例えています。
直訳すると「(それは)今自分に開かれているドアを全て開いてくれた」となり、“open” をあえて繰り返すことで、「過去のある出来事や経験が、現在の自分に与えられているあらゆる機会の出発点になっている」ということを印象的に伝えています。

ショーンには「インディ・ジョーンズという役が、現在のキャリアや立場につながるすべてのきっかけになった」という強い実感があることがわかりますね。

また、この表現とほぼ同じ意味で、インタビューやスピーチでよく使われる言い方に、次のようなものもあります。

例文

・Without that, I wouldn’t be where I am today.
「それがなければ、今の私はなかった」

・That experience paved the way for my career.
「あの経験が、今のキャリアへの道を切り開いた」

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いかがでしたか?

ふんだんにユーモアを交えながら、リラックスした雰囲気の中展開したふたりのトーク。「処刑人」シリーズで育まれた友情が会場に伝わり、聞いていて思わず笑顔になってしまうような温かいセッションでした。
今回取り上げたフレーズはいずれもネイティブが自然と使う、気の利いた言い回しである一方で、教科書ではなかなか出会えないものばかりです。こういった言葉をどんどんインプットして、実際に使ってみることで、会話の表現の幅が広がります。
大人気映画『処刑人』シリーズの第3弾も控えるふたり。
また来日した際には、どんな言葉で作品やキャリアについて語ってくれるのかにも注目したいですね。


開催概要
【東京コミコン2025】
名 称:東京コミックコンベンション2025 (略称:東京コミコン2025)
会 期:2025年12月5日(金)11:00~19:00
    12月6日(土)10:00~19:00
    12月7日(日)10:00~18:00  ※開催時間は変更となる可能性があります

会 場:幕張メッセ(〒261-0023 千葉県千葉市美浜区中瀬2-1)1ホール~6ホール
主 催:株式会社東京コミックコンベンション、東京コミックコンベンション実行委員会
イベント内容:国内外映画、コミックなどの最新情報公開、企業出展(限定・先行商品の販売、グッズの展示など)、実際に映画で使用されたプロップ(小道具)やレアグッズの展示、最新技術を使った様々なコンテンツの体験、海外セレブ俳優との交流、ステージでのライブやパフォーマンス、コスプレイヤーとの交流・コンテスト、漫画家やイラストレーターの作品展示や販売、「アーティストアレイ」

お問い合わせ先: 東京コミックコンベンション事務局 info@tokyocomiccon.jp
東京コミコン2025公式WEBサイトhttps://tokyocomiccon.jp/

「東京コミコン2025」で学ぶ英語表現、第一弾の記事はこちら