集団思考:チームワークの落とし穴

英文記事執筆:Everett Ofori / 翻訳:POLYGLOTS magazine編集部
人々が協力して働くと、大きなことが成し遂げられます。橋や塔といった建造物は、チームワークが驚くべき成果を生み出し得ることを私たちに思い出させてくれます。
しかし同時に、歴史は、人々が自分で考えることをやめ、強いリーダーや人気のある考えにただ従うようになったときに生じる危険についても警告しています。
このような危険な思考のパターンは、「Groupthink(集団思考)」と呼ばれています。
Groupthink(集団思考)は何か
集団思考は、集団の中での調和や合意を求める気持ちがあまりにも強くなりすぎて、人々が批判的に考えたり、異なる意見を表明したりすることが妨げられてしまった時に起こります。フェルナンデスは、集団思考を、「一人または二人の強い個性が集団を完全に支配し、他の意見が押しのけられてしまう状況」と定義しています。同様に、メリアム=ウェブスター辞典は、これを「自己欺瞞、強制的に作り出された同意、そして集団の価値観や倫理への同調によって特徴づけられる思考のパターン」と説明しています。
自己欺瞞とは
集団思考の最も有害な側面の一つは、自己欺瞞です。人々は、ビジネス、宗教団体、あるいは政治運動に、その目的を心から信じて参加するでしょう。初めのうちは、すべてが前向きで刺激的に感じられるかもしれません。しかし時間がたつにつれ、約束が守られないことや、非倫理的な行動といった問題が現れ始めることがあります。
自分自身の直感を信じる代わりに、メンバーは集団の他の人々に意見を求めます。その人たちは、多くの場合、「何も問題はない」と彼らを安心させます。その結果、何年もの時間が過ぎてからようやく、人々は、自分が貴重な時間を失い、人間関係を傷つけ、自分自身や他者に害を与えてきたことに気づくのです。
集団の価値観への同調
集団思考は、日常の職場文化の中にも見ることができます。日本では長い間、「上司より先に退社してはいけない」という考え方が一般的でした。仕事がすでに終わっていても、多くの社員は遅くまで残り、忙しそうに振る舞っていました。この例は、集団のルールが、誰もそれに疑問を投げかける勇気を持たないという理由だけで、生き残り続けることがあることを示しています。
ピッグス湾侵攻とジョン・F・ケネディ大統領
集団思考という概念は、心理学者アーヴィング・ジャニスが、著書『Victims of Groupthink』(1972年)の中で提唱しました。この本の中で彼は、1961年に起きた、アメリカが支援したキューバへの軍事攻撃であるピッグス湾侵攻の失敗を分析しています。この作戦の目的は、フィデル・カストロ政権を打倒することでしたが、侵攻した部隊はキューバ軍によって撃退されました。
ジャニスは、計画段階において、ジョン・F・ケネディ大統領の顧問たちが、内心の疑念を抑え込んでいたと主張しました。多くの顧問は、中央情報局(CIA)が侵攻を綿密に準備し、リスクを十分に理解していると信じていました。CIA は計画を立案し、キューバ亡命者の戦闘員を訓練し、大統領とそのチームに対して成功を強く約束していました。その結果、顧問たちは提案に異議を唱えることを恐れました。事実上、高度な知性と豊富な経験を持つ指導者たちは、批判的に考えることをやめ、集団に同意してしまい、その結果、悲惨な結末を招いたのです。
集団思考に対する解毒剤
ケネディは、この失敗から重要な教訓を学びました。その後の会議では、彼は率直な反対意見を奨励し、ときには顧問たちがより自由に発言できるよう、自ら部屋を出ることもありました。また、「devil’s advocates(悪魔の代弁者)」、つまり、あえて多数意見に異議を唱える役割の人々を任命しました。
フェルナンデスは、リーダーは自分自身の意見を早い段階で示すことを避け、不快に感じられる意見であっても、正直に発言した人を評価すべきだと説明しています。またジャニスは、「集団思考を防ぐための主要な原則は、警戒心を持ち、意見の相違を公に議論することである」と述べています。
私たちの場合
結局のところ、集団思考は、歴史上の問題であるだけでなく、個人的な問題でもあります。
私たちがリーダーであれ、集団の一員であれ、警告の兆候を見抜き、独立して考える勇気を持つことを学ばなければなりません。
emoji_objects本記事のイチオシ!フレーズ
「悪魔の代弁者」「反対役を務める人」
議論や意思決定の場で、あえて批判的・懐疑的な立場を取り、反対意見や見落とされがちな欠点を指摘する役割や人物を指します。会議などで同調圧力を防ぎ、思考の偏り(集団思考)を避ける役割を担います。
menu_book参考文献
- Fernandez, C. P. (2007). Creating thought diversity: The antidote to group think. Journal of Public Health Management and Practice, 13(6),
- Janis, I. L. (1972). Victims of groupthink: A psychological study of foreign policy decisions and fiascoes. Houghton Mifflin.




