信頼は、「ごめんなさい」から始まる

英文記事執筆:Everett Ofori / 翻訳:POLYGLOTS magazine編集部
幼い頃から、多くの文化では、親や年長者が人を思いやることの大切さを教えようとします。そして、わざとであれ、うっかりであれ、誰かを傷つけてしまったときには、「ごめんなさい」と謝ることも学びます。しかし、謝ることが苦手な人もいます。謝ることで、自分が弱く見えたり、相手より下の立場になったように感じたりするからです。
それでも、多くの人は、不注意や思いやりに欠ける行動によって関係性が傷ついたとき、謝罪は失われた信頼を取り戻すための第一歩になると考えるでしょう。多くの場合、最も大きな傷を生むのは失敗そのものではなく、その失敗を認めようとしないことなのです。
謝ることは、いつも簡単ではない
もし謝ることが簡単なら、私たちはもっと頻繁に謝罪の言葉を耳にしているはずです。しかし、多くの人は、謝ることで自分の立場が低くなるように感じるため、謝ることを難しく感じます。プライドや、人からどう思われるかという不安、立場を失うことへの恐れは、どれも「ごめんなさい」と言うことを難しくします。
人間の行動を研究する研究者たちは、誠実な謝罪には三つの要素があると述べています。
・自分が何を間違えたのかをはっきり認めること
・相手が傷ついた気持ちを理解すること
・今後は改善することを約束すること
誠実に謝る人は、その謝罪が受け入れられることを願っています。しかし、相手に謝罪を受け入れるよう強制することはできません。和解するためには、傷ついた側にも関係を修復しようとする誠実な気持ちが必要です。そして、受けた傷が大きいほど、許すことは簡単ではありません。
言い換えれば、たとえ謝罪が心からのものであっても、信頼関係を再構築し始めるためには、傷ついた側も、その出来事を新しい視点で受け止めようとする姿勢を持つ必要があるのです。
だからこそ、「許したとしても、起きたことは長い間忘れられない」と言う人がいます。許すことは、すぐに信頼が元どおりになることを意味するわけではありません。信頼を取り戻すには、多くの場合、時間と、一貫した行動の変化が必要なのです。
ハーバード大学医学部心理学助教のロナルド・シーゲル博士は、次のように述べています。
「人とのつながりを保ち、あるいは取り戻すためには、自分が正しいか間違っているかという考えを手放し、その代わりに相手がどのような経験をしたのかを理解しようとする必要があります。」
この考え方は、謝罪がなぜ重要なのかをよく表しています。信頼を取り戻すには、どちらが正しいかよりも、相手がどう感じたのかに目を向けることが大切だからです。
小さな謝罪、大きな謝罪
日本を初めて訪れた人は、日本人が非常によく謝ることに驚くことがあります。誰かとぶつかると、相手は、こちらが反応する前に「すみません」と言うことがよくあります。特に、謝罪の言葉をあまり使わない文化で育った人にとっては、不思議に感じられるかもしれません。
日本語や日本文化を研究するローリー・イノクマ氏は、「『すみません』のうち、謝罪の意味は10%しかありません。残りの90%は、敬意や礼儀、誠実さを表すために使われています」と述べています。この意味で、「すみません」は罪悪感を表す言葉であるだけでなく、人との調和を保つための言葉でもあるのです。
日常生活では、誰かに助けてもらったときや、ドアを押さえてもらったとき、道を譲ってもらったときなどにも、ちょっとした「すみません」が使われます。こうした小さな謝罪や気遣いの言葉は、時間をかけて人とのやり取りをより円滑で、お互いを尊重したものにしていきます。また、本来なら気まずくなりそうな場面の緊張も和らげてくれます。
一方で、もっと大きな謝罪もあります。例えば、企業が突然の値上げをしたり、社会的な問題を引き起こしたりした場合には、正式な謝罪が求められます。そのような場面では、企業の責任者が深く頭を下げ、「申し訳ございません」と述べ、深い反省と責任を示します。
このような謝罪は、社会からの信頼や企業の評判に関わるため、慎重に準備されることが少なくありません。起きた出来事そのものは忘れられないかもしれませんが、誠実な謝罪は、失われた信頼を少しずつ取り戻すきっかけになります。そして、言葉だけでなく行動も変われば、人々は少しずつ再び安心できるようになるかもしれません。
あなたは謝ることをどう考えますか
小さな謝罪であっても、大きな謝罪であっても、謝罪は人間関係の中で大切な役割を果たしています。謝罪は対立を和らげ、相手への敬意を示し、失われた信頼を取り戻す可能性を生み出します。また、「自分が正しいこと」よりも、人との関係のほうが大切なことがあると私たちに気づかせてくれます。
あなたは、謝ることにどのくらい抵抗がありますか。そして、謝罪と信頼の回復にはつながりがあると思いますか。
emoji_objects本記事のイチオシ!フレーズ
「和解」「関係修復」「和合」
「reconciliation」は、対立や争いのあとに、互いの関係を修復し、再び良い関係を築くことを表す名詞です。個人同士だけでなく、民族・国家・社会全体の関係改善についてもよく使われます。
The two communities have been working toward reconciliation for many years.
「その二つのコミュニティは、長年にわたり和解に向けて取り組んできた。」




