Does Free Will Exist? 「自由意志って存在すると思う?」

英文記事執筆:SAKURACO / 翻訳:POLYGLOTS magazine編集部
The Grammar of Life:
アメリカ在住のライターSAKURACOが、日々の暮らしや子育て、人々とのコミュニケーションの中で出会った「言葉」について想いを巡らせる隔週連載。人生をいろどり、かたどる言葉たち(The Grammar of Life)を、一緒に味わってみませんか。
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会話にはたいてい、相手が誰で、何のために話しているのかによって、ある程度の決まった流れがあります。スーパーで会計をしてくれる人と話すときと、上司と昇給について交渉するときとでは、会話の仕方はまったく違います。
でも、マッチングアプリは少し変わっています。同じ会話の中で、「好きな映画は?」という話から、「あなたの愛着スタイルは?」とか、「今、何から立ち直ろうとしているの?」なんて話に飛ぶことがあります。
それでも、マッチングアプリを長く使っていると、そんな「予測不能さ」さえ、不思議と予測できるようになってきます。まるで、みんなが従っている見えない台本があるかのようです。そのうち、よくある質問にはかなり上手に答えられるようになります。返事をうまく整えるようになり、気づけば自動運転のように答えています。
そんなときTinderで、ある男性にこう聞かれました。
「自由意志って本当に存在すると思う? それとも幻想かな?」
一瞬、私は何千年も前にタイムスリップして、うっかりソクラテスとマッチしてしまったのかと思いました。
でも、いやいや。
彼はれっきとした1980年代生まれのミレニアル世代で、Ray-Banのサングラスをかけていました。
それでも、その質問には思わず立ち止まりました。
今年は、自分の人生なのに、いろいろなことが「自分に降りかかってくる」ように感じることが多くありました。ほかの人が決断をし、進む方向を変えても、私は自分では選んでいない状況に反応しているだけのように感じていました。結婚生活も、自分が望んだかたちではない終わり方をしました。まるで誰かに、突然自分の人生の台本を書き換えられたようでした。
不思議なのは、自分の人生のひとつの形をコントロールできなくなったことで、その次の人生については、かえって自分で決められることが増えたことです。もちろん、自分が望んで手に入れた自由ではありません。でも、それでも自由には違いありません。
誰にも相談せずにソファを買える。
見ているのにうんざりした家電を捨てられる。
パートナーの好みに合うかどうかを気にせず、壁を紫色に塗ることだってできる。
それ以上に、私は自分らしくいることを意識するようになりました。どれだけ残念なことであっても、状況やほかの人の行動は、自分にはコントロールできないからです。それでも自分がコントロールできるのは、起きたことや他人の行動に対して、自分がどう反応するかということだけです。
「この瞬間、私はどんな人でいたいんだろう?」
「私は、どんな自分としてここにいたいんだろう?」
でも、もし自由意志が存在しないのなら、私は本当に、こうしたことを自分で選んでいるのでしょうか。
そこでふと、もしかすると、私はそんなに気にしていないのかもしれないと思いました。
私たちの選択は、生物学的な要因や置かれた状況、そして数え切れないほどの外部からの影響によって形づくられているのかもしれません。でも、それらが何らかの不思議な組み合わせで、「自分が選んでいる」と私に思わせているのだとしたら、それでもいい。
その力がこれからも、苦しさより希望を、批判より思いやりを、身を守ることより心を開くことを、憎しみより愛を選ぶ方向へ、私を導いてくれればいいと思います。
自由意志が、私たちの想像が生み出したものだったとして、それが何だというのでしょう。
人間には、そこにはないものを信じる驚くべき力があります。
私たちは、物語や意味、神や怪物、国境やお金、さらには頭の中に世界そのものをつくり出します。そして、そうした信念が、私たちの生き方を形づくることがあります。
自由意志も、少しそれに似ているのかもしれません。
自分の選択が本当に自分のものなのか、私は一生わからないかもしれません。
でも、「自分には選ぶことができる」と信じることで、自分がなりたい人間に忠実でいられるのなら、その信念はすでに、現実に何かを生み出しているのだと思います。
そしてそれは、何度でも語り直す価値のある物語です。
emoji_objects本記事のイチオシ!フレーズ
「ふと気づく」「はっと悟る」「ようやく理解する」
「dawn」はもともと「夜が明ける」という意味で、「it dawns on someone」は、夜が明けるように、それまで気づかなかったことが突然わかったり、徐々に理解できたりすることを表します。「It dawned on me that ~」の形で、「私は~ということにふと気づいた」という意味でよく使われます。
It suddenly dawned on me that I had forgotten my wallet.
「財布を忘れてきたことに、突然はっと気づいた。」
※このエッセイはSAKURACOさんが英語で執筆したものを、編集部で和訳しました。




