お酒を飲むと英語はうまくなるのか? 「レシピー」で試してみた

「酔っているほうが英語が流暢に話せる」に賛同の声多数

ちょうど1年ほど前でしょうか、英会話に関する驚くべき体験談がXで話題になっていました。

それは、「お酒を飲んで酔った方が流暢に英語が話せる」という主旨のものでした。

しかも一人のつぶやきではなく、「凄く分かる」「酔ったときのほうが英語が上手いと言われたことがある」「飲み会中に一度も使ったことのない表現が自然と出てきた」などの反応が続出し、何人もの人がこの言説に共感しているのが見受けられました。

これは本当なのでしょうか? 酔いが連れてきた願望と妄想、ではなく……?

なぜ酔っていると英語を流暢に話せるのだろう?

X上の議論では、考えられるいくつかの仮説が挙げられています。

① 気が大きくなり積極的に話せる

「クラブで出会った海外の人と意気投合したのに、後日しらふで会うと会話が弾まなかった」「脳のリミッターが外れるあの感じ」などのコメントがありました。この議論で多くの方が一番に思い浮かべていたのはこの説だったようです。日本人は”恥の文化”と言われるほどなので、恥じらいや自制心が足かせになっている部分もあるのでしょうか。

② 酔うと舌がもつれて日本語の発音に縛られなくなる

日本語は a i u e o の5つの母音に子音が付随する形で構成されており、子音だけで存在することはありません。一方、英語は子音のみで音として成立することが可能です。酔って日本語的な発音が曖昧になり、自然と子音のみの発音が出やすくなる可能性があるのではないか、という説です。たしかに酔っているとき、しっかり口を動かせていないかも。

実際、私の場合は流暢に話せました(英語じゃないけど)

かく言う筆者も「お酒で流暢になる説」には心当たりがあります。といっても英語、ではなく落語の話。筆者は学生時代、落語研究会に所属していました。いざ初舞台、「何ヶ月も練習に練習を重ねてきたので大丈夫」と、頭ではそう分かっていても、たった一人で人前に出る経験などそうあるものではありません。

いよいよ自分の出番が迫り、出囃子が鳴り始めたところで先輩が小さなプラカップを差し出し、「これを飲んでから行きな」と一言。中身は日本酒でした。クイッと一気に飲み干すと身体の芯がカーッと熱くなり、その勢いのまま舞台へ。たくさんの視線に怯むことも、口ごもったり言い淀んだりすることもなく、上々の賑わいで初舞台を終えることができました。神聖な舞台においてその行いはありやなしや、という議論はさておき……あの成功体験は忘れられません。

本当に発音が向上していた! 実証実験が2025年度イグ・ノーベル平和賞を受賞

そして先日ネットニュースを賑わせた、今年のイグ・ノーベル賞* 。なんと、フライブルク大学(ドイツ)のフリッツ・レナー博士らが「アルコールを飲むと外国語で話す能力が高まることがある」と実証し、平和賞を受賞したのです!

https://www.asahi.com/articles/AST9L2C8BT9LULLI00FM.html

オランダ語を学ぶ50人の学生に、ある人にはウォッカのカクテルを、ある人にはよく似たノンアルコール飲料を飲んでもらい、オランダ語でディスカッションをしてもらったそうです。その後、ディスカッションの音声をオランダ語のネイティブスピーカーが聞いたところ、カクテルを飲んだ人のオランダ語のスキル(とくに発音)が高い評価を得たということでした。酔ってうまく話せた「気がするだけ」ではなく、「本当に」うまく話せていたのです。

この結果に対し、レナー博士は「アルコールでリラックスできたことで、自信を持って話せた結果かもしれない」と推察していますが、一方で「不可解」とも語っており、そのメカニズム解明までは至っていません。でも、私たちのようなのんべえ(ですよね??)には嬉しいニュースとなりました!

「レシピー」のスピーキング機能を使って検証!

しかし、ネットでは疑わしいニュースも少なくない昨今。「百聞は一見にしかず」という言葉もありますので、ポリグロッツのAI英語学習アプリ「レシピー」を使って、実際に試してみることにしました。

「レシピー」はこちらからダウンロード!

方法は至ってシンプルです。ライブラリメニューにある「スピーキング」機能で例文を読み、アプリで採点してみる。お酒を飲んだ後にもう一度同じ例文を読んで採点し、飲酒前と比べてみました。お酒は、生ビール2杯、レモンサワー1杯、梅酒ロック1杯を頂きました。だいぶ良い気分です(笑)。

半信半疑で挑戦したのですが、これが意外にも結果に表れていました。飲酒前からそれなりに高得点を叩き出していたものの、流暢さはいまひとつの点数。それが飲酒後には10ポイント上昇し、合格点に到達しました! 発音も要練習ポイントは残るものの、97点から100点へとアップしています。

また、こちらの例文では100点を取ることができず、比較的低めの点数にとどまっていました。しかし飲酒後には正確さ、発音ともに100点! 流暢さもポイントアップして良い結果を出すことができました。

体感としても、飲酒後には滑舌がスムーズになり発音しやすくなった印象を受けました。今回は短い例文だったので、微々たる変化しか観測できませんでしたが、もう少し長い文章を読んでみると、より顕著に違いが表れそうな気がします。

流暢なアウトプットのためには、確実なインプットが必要。当たり前ですが……

もっとも、何もせずただお酒を飲んだところで、急にペラペラと話せるようになるわけではありません。”火事場の馬鹿力”が発揮されるのも、日々コツコツとトレーニングを積み重ねていればこそ、です。お酒の力にばかり頼らず、自信を持って話せることを目指して勉強をがんばろう……と自分に言い聞かせる筆者でした。

大人の学習者の皆さん、少しお酒を飲んで心理的な障壁を下げて英語を話すと、新たな自分を発見できるかもしれませんよ!(飲み過ぎには注意!)

* イグ・ノーベル賞(Ig Nobel Prize):アメリカのユーモア系科学雑誌編集長、マーク・エイブラハムズが1991年に創設した、「人々を笑わせ、そして考えさせるような研究」に対して贈られる賞。ノーベル賞のパロディであることは言うまでもない。毎年9〜10月に開催される授賞式にはプレゼンターとしてノーベル賞受賞者が多数参加する。

「英語学習法検証シリーズ」第一弾はこちら
4技能に効く音読トレーニング、ヒソヒソ声でもOK?
https://mag.polyglots.net/1638/whisper