「座る権利」を求める運動の始まり

英文記事執筆:まりか / 翻訳:POLYGLOTS magazine編集部 / 写真:columbo.photog / Shutterstock
数年前、当時大学生だった茂木楓さんは、首都圏青年ユニオン*に加入し、レジ係に椅子を提供するよう雇用主と交渉を始めました。彼は埼玉県内のスーパーマーケットで3年間レジ係として働いており、1回あたり3〜4時間の立ち仕事が、自分の足や腰にどれほど負担をかけているかを実感していました。
2022年12月、ユニオンの組合員たちは「#座ってちゃダメですか」をスローガンに掲げ、座る権利を求めるオンライン署名を開始しました。それは世論から大きな支持を得て、最終的に2万2千もの署名を集めることに成功しました。雇用主は2023年9月から椅子を導入する試験的な取り組みを行うことに同意しました。しかし、従業員の約30%から反対意見が出たため、会社はこの試験を恒常的な制度として採用しない決定を下しました。
2024年5月、組合員たちは厚生労働省に要望書を提出しました。規則(労働安全衛生規則)では、業務中に座る機会がある可能性のある労働者には椅子を提供しなければならないとされていますが、これらの指針がどのような職種に適用されるのかは明確に示されていません。
組合員たちは、労働者に座席が必要とされる具体的な職種や状況を明確にするよう省に求め、省は小売業界団体への聞き取り調査を行い、労働環境を調査することに同意しました。国立労働安全衛生総合研究所によるレビューによれば、長時間の立ち仕事により、腰痛、心血管系の問題、妊娠への悪影響などのリスクが大幅に高まることが示されています。また、労働者が歩き回ることができ、立位から座位、あるいは体をもたせかける姿勢へと容易に移行できるようにすることが推奨されています。
さらに、手術室看護師を代表する米国周術期看護師協会(Association for peri-operative Registered Nurses)は、長時間立ち続けることが血液循環に悪影響を及ぼし、慢性疾患につながる可能性があるとして、座位と立位を切り替えられるスツールの使用など、「疲労を軽減する」手法を推奨しています。
正しい方向への小さな一歩
2024年、人材・就職支援会社のマイナビは、働きながら座るという考え方を広めることを目的として、「座ってイイッスPROJECT」を開始しました。同社の調査によると、パートタイム労働者の60%が仕事中に座りたいと考えている一方で、小売業およびサービス業の職場のうち、実際にそれを認めているのは20%にとどまっています。
この調査では、600人の労働者と雇用主が、座ることが許可されているかどうか、また許可されていない理由など、さまざまな質問に回答しました。その結果、雇用主の44.3%が、その従業員たちは「原則として座ることは認められていない」あるいは「明確な規則はないが、座らない」と回答しました。
労働者に座ることを認めない理由として最も多かったのは、「客に悪い印象を与えないため」でした。また、パートタイム労働者の約20%が、立ち仕事による身体的な要因のために仕事を辞めざるを得なかったと回答しています。一方で、50%以上が、座ることが許されれば仕事への意欲が高まると述べました。興味深いことに、雇用主の70%以上は、労働者が座っても問題ないと考えていると回答しています。
韓国、ドイツ、ブラジルなどの国々では、レジ係が座って働くことは一般的です。ではなぜ、日本ではいまだに、労働者が長時間立ったまま働くことを求められているのでしょうか。
首都圏青年ユニオン:パート・アルバイト・フリーター・派遣・正社員など、さまざまな働き方をする若者のための労働組合
emoji_objects本記事のイチオシ!フレーズ
「〜に悪影響を与える」「〜を消耗させる」
「take a toll on」は、時間の経過とともに心身や状況に徐々に悪影響を及ぼすことを表す表現です。目に見える大きな被害というよりも、積み重なった疲労やダメージを強調するときに使われます。
He realized the toll that his 3-4 hour shifts were taking on his feet and back.
「彼は、3〜4時間の勤務が足や背中に与えている負担に気づいた。」




